月額変更(随時改定)の具体例とイレギュラー時の対応方法!
今回は社会保険の月額変更届についてご説明させていただきます。
月額変更に該当する要件を具体的な金額で確認しながら説明いたします。
また、イレギュラー時の処理についてもご説明しておりますので、ぜひお読みください。
昇給があったとき(一般的な月額変更)
昇給があったときは、月額変更のための次の3つの条件を満たしているのかを確認します。
- 基本給、手当(固定的賃金)が上がった(または下がった)
- 支払基礎日数が3カ月とも17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上ある
- 変動月以降引き続く3カ月間に3か月間に受けた報酬の合計額をその月数【3カ月】で割り、1か月の平均額を算出して、3カ月間に準報酬月額等級区分にあてはめ、従前の標準報酬月額と比べたときに、2等級以上の差が生じている
⇒一般被保険者で4月に役職手当で30,000円の増額(昇給)があり、4月5月6月の各月とも報酬の支払基礎日数が17日以上ある場合は、各月の報酬の合計額をその月数【3カ月】で割って算定します。
4月 支払基礎日数30日 基本給200,000円 役職手当50,000円 残業手当10000円
5月 支払基礎日数31日 基本給200,000円 役職手当50,000円 残業手当5000円
6月 支払基礎日数30日 基本給200,000円 役職手当50,000円 残業手当10000円
報酬月額・・・(260,000円+255,000円+260,000円)÷3=258,333円
※算出した平均額に1円未満の端数が生じた場合は、1円未満は切り捨て
※報酬月額を「標準報酬月額等級表」にあてはめ、標準報酬月額(等級)を確認
新しい標準報酬月額・・・(健保)260千円(厚年)260千円
3カ月以内に2度の固定的賃金変動があったとき
固定的賃金の変動が発生した後、3カ月以内に再度固定的賃金が変動した場合には、その都度それぞれの固定的賃金変動が随時改定の対象として取り扱われます。
仮に固定的賃金の変動が毎月発生した場合には、それぞれの月の賃金変動を契機として、その都度2等級以上の差が生じているかを確認し、随時改定の可否について判断します。なお、2等級以上の差を判断するに当たっては、固定的賃金のみならず、 非固定的賃金を含めた報酬月額全体で比較を行います。
⇒4月に昇給があり(20,000円)があり、さらに6月に住宅手当(50,000円)が加算された場合、4月~6月の平均額が従前の標準報酬月額と2等級以上の差があれば7月に月額変更が行われます。
さらに、6月~8月の平均額が7月に改定された標準報酬月額と2等級以上の差があれば9月に月額変更が行われます。
4月 支払基礎日数30日 基本給240,000円 残業手当20,000円
5月 支払基礎日数31日 基本給240,000円 残業手当15,000円
6月 支払基礎日数30日 基本給240,000円 住宅手当50,000円 残業手当15,000円
7月 支払基礎日数31日 基本給240,000円 住宅手当50,000円 残業手当30,000円
8月 支払基礎日数31日 基本給240,000円 役職手当50,000円 残業手当45,000円
4月~6月 報酬月額(260,000円+255,000円+305,000円)÷3=273,333円(1円未満切り捨て)
☆7月からの標準報酬月額・・・(健保)280,000円(厚年)280,000円
6月~8月 報酬月額(305,000円+320,000円+335,000円)÷3=320,000円
☆9月からの標準報酬月額・・・(健保)320,000円(厚年)320,000円
※算出した平均額に1円未満の端数が生じた場合は、1円未満は切り捨て
※報酬月額を「標準報酬月額等級表」にあてはめ、標準報酬月額(等級)を確認
修正平均を出すパターン⇒昇給分がさかのぼって支給されたとき
さかのぼり昇給があったため、昇給差額が支給された場合は、その差額が支給された月が固定的賃金に変動があった月となり、引き続く3カ月で月額変更に該当するかどうかを確認することになります。
この場合、その支払われた額をそのまま単純に計算すると、差額分だけ報酬が高くなってしまうため、遡及差額分は除外して計算します。
⇒5月の時点で4月にさかのぼった遡及昇給が行われた場合
4月 支払基礎日数30日 基本給240,000円 残業手当20,000円 4月昇給差額40,000円
5月 支払基礎日数31日 基本給240,000円 残業手当15,000円
6月 支払基礎日数30日 基本給240,000円 住宅手当50,000円
単純平均した場合の報酬月額(290,000円+255,000円+290,000円)÷3=278,333円(この額を「平均額」に記入)
修正平均した報酬月額(290,000円-40,000円+255,000円+290,000円)÷3=265,000円(この額を「修正平均額」欄に記入)
☆7月からの新しい標準報酬月額・・・(健保)260千円(厚年)260千円
※算出した平均額に1円未満の端数が生じた場合は、1円未満は切り捨て
※報酬月額を「標準報酬月額等級表」にあてはめ、標準報酬月額(等級)を確認
手当の変更申請が遅れた場合の起算月
転居に伴う通勤手当変更の申請が従業員から出されたのが遅く、変更後の正しい通勤手当を支給する月が、本来支給すべき月よりも遅れて支給された場合、月額変更は本来新たな額の通勤手当を支給するはずだった月を変動月として計算します。
ただし、この取り扱いは、会社側の給与計算ミス、本人の過失があった場合に限られますので、単に遡及して差額支払いが行われる場合は、一つ上のパターン【修正平均を出すパターン⇒昇給分がさかのぼって支給されたとき】として取り扱います。
給与計算期間の途中で昇給した場合の起算月(変動月)について
給与計算期間の途中で昇給・降給や、手当の額が変更になった場合、昇給・降給・手当変更した給与が実績として1か月分確保された月を固定的賃金の変動が報酬に反映された月として取扱い、それ以後3カ月間に受けた報酬を計算の基礎として月額変更の判断を行います。
⇒当月末締め翌月末払いの給与で、当月15日以降の給与単価が上昇した場合
給与単価が上昇した翌月支払いの給与は単価上昇の実績を1カ月分確保できていないため、翌々月を3カ月の起算点として 月額変更の可否を判断します。
手当が新設された月に、手当の支給条件を達成されなかったときの起算月(変動月)について
あらたに非固定的賃金の新設がなされたことによる賃金体系の変更を月額変更の契機とするときは、その非固定的賃金の支払いの有無に係わらず、非固定的賃金が新設された月を起算月とし、以後の継続した3カ月間のいずれかの月において、当該非固定的賃金の支給実績が生じていれば、月額変更対象となります。
なお、非固定的賃金の新設以後の継続した3カ月間に受けた報酬のいずれにも当該非固定的賃金の支給実績が生じていなければ、報酬の変動要因としてみなすことができないため、月額変更の対象とはなりません。
また、その場合には、当該非固定的賃金の支給実績が生じた月を起算月とすることにもならないため、注意が必要です。
産前産後休業または育児休業中の無給期間に昇給等があった場合
産前産後休業又は育児休業中に固定的賃金に変動があった場合には、実際に変動後の報酬を受けた月を起算月として改定します。
昇給したとしても、産前産後休業や育児休業中であれば給与の支給はないと思いますので、実際に支給がされていない以上は、手続きは発生しません。
ただし、産前産後休業又は育児休業終了後に月額変更が必要か否かを確認する必要があります。
職場復帰後は、育児休業等終了時改定に該当するかを確認することになりますが、育児休業終了時改定に該当しなくても、今回のように、産前産後休業又は育児休業中に昇給があり、月額変更の要件に該当する場合は、手続きをしなくてはいけませんので、注意が必要です。
※育児休業等終了時改定は「手続きすることが出来る」ものになり、本人が希望しないのであれば、申請しなくてもよいものになりますが、月額変更は要件に該当すれば「しなくてはならない」ものになります。
オフィスステーションを使用し、手続きを効率化しましょう!
弊事務所では、クラウド型電子申請システム「オフィスステーション(https://www.officestation.jp/)」を使用し、手続業務の効率化を行っております。
月額変更の手続きについては、給与データをあらかじめオフィスステーションに登録しておくことによって、手続き時に手入力の必要がなく、効率的に作業を行うことが可能になります。
オフィスステーションを使用し、電子申請を行うことによって、進捗管理や公文書管理を行うこともできますので、ぜひご検討ください。