労働保険料等の納付特例について詳細に解説します!
今回は労働保険料等の納付の特例についてご説明させていただきます。
労働保険料等の納付が困難となった際、労働保険料等の猶予制度が受けられる場合があります。
猶予が認めれた場合、猶予期間中の延滞金の免除や、財産差し押さえの猶予又は解除といった効果があります。
どんなケースが対象になるのか、細かい要件もありますので、ぜひお読みください。
災害による「納付の猶予」
災害の発生に伴い、財産に相当の損失を受けた場合について、一定の要件に該当するときは、納付の猶予が認められます。
納付の猶予が認められた場合、以下の効果があります。
- 猶予期間中の延滞金が免除されます。
- 財産の差し押さえや換価(売却)が猶予されます。
猶予の要件
- 事業主が、震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害の発生により、全積極財産(負債を除く資産)の概ね20%以上に損失を受けた。
- 納付すべき労働保険料等が、①の損失を受けた日以後1年以内に納付するものである。(労働保険料等の納期限が、その損失を受けた日以後に到来するものである)
- 申請書が提出されている。
猶予期間
猶予を受けることができる期間は、1年の範囲内(※)で、被害のあった財産の損失の状況及び財産の種類を勘案して決定されます。
※猶予期間内に完納することができないやむを得ない理由があると認められる場合は、通常の納付猶予を申請することで、災害による納付の猶予期間と合わせて最長3年以内の範囲で猶予期間の延長が認められることがあります。
申請方法
災害がやんだ日(※)から2ヵ月以内に、管轄の都道府県労働局に「労働保険料等納付猶予申請書(災害猶予用)」、「被災明細書」等を提出します。
※申請者の被災状況を斟酌し判断することとなりますので、申請者ごとに異なる場合があります。
通常の「納付の猶予」
労働保険料等を一時に納付することが困難となった場合、一定の要件に該当するときは、納付の猶予が認められます。
納付の猶予が認められた場合、以下の効果があります。
- 猶予された金額を猶予期間中に分割して納付することができます。
- 猶予期間中の延滞金が免除されます。
- 財産の差押えや換価(売却)が猶予されます。
猶予の要件
①次のいずれかに該当する事実があること
- 財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難にあった。
- 事業主又はその生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷した。
- 事業を廃止し、又は休業した。
- その事業につき著しい損失(※)を受けた。
※申請前の1年間において、その前年の利益額の2分の1を超える損失(赤字)が生じた場合をいいます。
- 上記に類する事実があった場合は、都道府県労働局又は労働基準監督署にご相談ください。
②①の該当事実により、納付すべき労働保険料等を一時に納付することができないと認められること。
③申請書が提出されていること。
④原則、猶予を受けようとする労働保険料等の金額に相当する担保の提供があること。
猶予期間
猶予を受けることができる期間は、1年の範囲内(※)で、申請者の財産や収支の状況に応じて、最も早く労働保険料等を完納することができると認められる期間に限られます。
※猶予期間内に完納することができない、やむを得ない理由があると認められるときは、申請することにより、当初の猶予期間と合わせて最長2年以内の範囲で猶予期間の延長が認められることがあります。
申請方法
申請期限はありませんが、猶予に該当する事実発生後、猶予を受けようとする期間より前に、管轄の都道府県労働局に以下を提出します。
原則、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供が必要です。
- 労働保険料等納付猶予申請書
- 猶予該当事実があることを証する書類
- 財産収支状況書(猶予を受けようとする金額が100万円以下の場合)
- 財産目録(猶予を受けようとする金額が100万円を超える場合)
- 収支の明細書(猶予を受けようとする金額が100万円を超える場合)
- 担保の提供に関する書類
※100万円以下である場合、猶予期間が3ヵ月以内である場合、担保として提供できる財産がない場合は、担保を提供する必要はありません。
換価の猶予
労働保険料を一時に納付することが困難となった場合で、一定の要件に該当するときは、換価の猶予が認められる場合があります。
換価の猶予が認められた場合、以下の効果があります。
- 猶予された金額を、猶予期間中の各月に分割して納付することになります。
- 猶予期間中の延滞金が免除されます。
- 必要があると認められる場合には、事業の継続又は生活の維持を困難にする恐れがある財産の差押えが猶予又は解除されます。
猶予の要件
以下の全ての要件に該当するときは、
- 労働保険料等を一時に納付することにより、事業の継続等を困難にするおそれがあると認められること
- 労働保険料等の納付について誠実な意思を有すると認められること
- 納付すべき労働保険料等の納期限から6カ月以内に申請されていること
- 換価の猶予を受けようとする労働保険料等より以前の滞納がないこと
- 原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること
猶予期間
猶予を受けることができる期間は、1年の範囲内(※)で、申請者の財産や収支の状況に応じて、最も早く労働保険料等を完納することができると認められる期間に限られます。
※猶予期間内に完納することができない、やむを得ない理由があると認められるときは、申請することにより、当初の猶予期間と合わせて最長2年以内の範囲で猶予期間の延長が認められることがあります。
申請方法
猶予を受けようとする労働保険料等の納期限から6カ月以内に、管轄の都道府県労働局に以下を提出します。
- 労働保険料等換価猶予申請書
- 財産収支状況書(猶予を受けようとする金額が100万円以下の場合)
- 財産目録(猶予を受けようとする金額が100万円を超える場合)
- 収支の明細書(猶予を受けようとする金額が100万円を超える場合)
- 担保の提供に関する書類
※申請による労働保険料等以外に、既に滞納となっている労働保険料等がある場合には、原則として、申請による換価の猶予は認められません。
担保の提供について
災害猶予の場合、担保の提供は不要ですが、猶予の申請をする場合は、原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保を提供する必要があります。
担保として提供することができる主な財産は、以下が挙げられます。
- 国債や労働局長が確実と認める上場株式などの有価証券
- 土地、建物
- 労働局長が確実と認める保証人の保証
なお、以下の場合は、担保を提供する必要はありません。
- 猶予を受ける金額が100万円以下である場合
- 猶予を受ける期間が3ヵ月以内である場合
- 上記の担保として提供することができる種類の財産がないという事情がある場合
猶予の取消しについて
猶予が認められた後に、以下に該当するときは、猶予が取り消される場合があります。
- 「猶予許可通知書」に記載された分割納付計画のとおりに納付しない場合
- 猶予を受けている労働保険料等以外に、新たに納付すべき労働保険料等が滞納となった場合等
他の執行機関に提出された猶予申請書等の活用について
2ヵ月程度の間に、国税、地方税、厚生年金保険料等の猶予申請を行っている場合、その際の申請書や財産収支状況書等の写しを添付することで、一部の記載や添付が省略できます。
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