年金事務所の調査では何を見られる? 実施から終了までの流れと対応のポイントを解説します!
今回は年金事務所の調査について見ていきたいと思います。
2024年10月より、社会保険の適用拡大が行われました。
これにより、該当企業に対して年金事務所の調査が増えております。
社会保険の加入や月額変更の手続きなど、調査で指摘を受けないように日ごろから適切な手続きを行うことが重要です。
それでは実際にどんなことが調査されるのか、また、調査の流れ等を詳細に解説します。
ぜひお読みください。
年金事務所の調査について
年金事務所は適用事業所の従業員に係る適用漏れの防止及び届出の適正化を推進し、将来的な無年金者、低年金者の発生の防止や事業主の負担の公平性を確保するため、適用事業所に対する事業所調査を実施しています。
こちらの調査は厚生年金保険法第100条第1項、健康保険法第198条1項に基づいて行われます。
厚生年金保険法第100条第1項では、
「厚生労働大臣は、被保険者の資格、標準報酬、保険料又は保険給付に関する決定に関し、必要があると認めるときは、事業主に対して、文書その他の物件を提出すべきことを命じ、又は当該職員をして事業所に立ち入って関係者に質問し、若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。」
とあり、同第102条において、事業主が、正当な理由がなくて
「第百条第一項の規定に違反して、文書その他の物件を提出せず、又は当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の陳述をし、若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。」
は6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処することとされております。
したがって、年金事務所からの調査実施通知がきたら応じる必要があります。
調査は2種類の形式があり、年金事務所に会社担当者が赴く年金事務所内での調査、または会社に年金事務所職員が趣く社内調査となります。
新型コロナウィルスが流行っていた時には、書類を年金事務所に送付し、年金事務所内で職員が書類を確認して調査終了となっておりましたが、最近では職員が趣く社内調査も見受けられます。
この様な場合には、年金事務所内調査・社内調査の別については特に決まっておらず、その時々に決められます。
調査通知
まず、年金事務所より調査実施の通知書が会社に送付されます。
何の前ぶれも無く、突然送付されます。
通知書には、調査の趣旨、調査日時、調査場所、調査対象者、用意していただく書類、年金事務所の担当者名・連絡先が記載されております。
調査の趣旨は被保険者資格・報酬等が適正かどうか、ということが記載されておりますが、これに限定されておらず社会保険ルール全般について及びます。
調査日時については大体1カ月以内での日時の指定が行われておりますが、変更が可能ですので、指定の日時に都合がつかないようでしたら年金事務所に連絡し、日時の変更の旨を相談します。
調査場所は会社または年金事務所となります。
調査対象者は全従業員(パート・アルバイト・契約社員・役員問わず)となり、支店等がある場合で本社を適用事業所として一括して支店分の社会保険の手続きを行っている場合には、支店分も含みます。
用意していただく書類については、調査票(通知書に同封されている)、労働者名簿、雇用契約書、源泉所得税領収書、賃金台帳、出勤簿、就業規則等となります。
調査当日までにこちらの書類を全て用意する必要があります。
用意ができない書類については、年金事務所に連絡し、応相談となります。
調査当日
調査日時になりますと社内調査の場合、年金事務所の職員が会社に来社されます。
人数は1人であったり複数人であったり様々です。
最初は簡単なヒアリング(事業の内容や支店、従業員や役員の人数等)が始まり、次に調査通知の書類の確認となります。
雇用契約書は大まかな労働時間の確認や従業員の雇用形態(パート・アルバイト・契約社員・正社員等)を確認します。
源泉所得税領収書の人数と賃金台帳や出勤簿の人数の照合を行います。
主には賃金台帳を一人一人確認し、標準報酬月額・随時改定・定時決定が適正か、社会保険加入要件を満たす方について資格取得されているかを確認します。
就業規則は賃金台帳に記載されている手当等の内容や給与の締日・支払日を確認します。
所要時間は内容にもよりますが、10名位の会社で何もなければ30分程です。
人数が多ければ多いほど確認の量が増えますので確認時間が長くなります。
調査項目
通知書に調査項目の詳細な記載はございませんが、調査の趣旨としては被保険者の資格・報酬等についてと記載がありますので、次の項目についてとなります。
- 社会保険に加入すべき方が加入しているかどうか(役員を含む)
- 資格取得時の標準報酬月額が適正かどうか
- 昇降給や勤務形態の変更に応じ、随時改定(月額変更)がされているかどうか、および標準報酬月額が適正かどうか
- 定時決定(算定基礎)の対象者について漏れなく届け出されているか、および標準報酬月額が適正かどうか
- 一時金を支給した場合、賞与支払届を届け出ているか
もちろん上記以外についての社会保険ルール全般についても調査対象となりますが、時間に限りがありますので、調査対象としては上記が主となります。
指摘事項
調査が終わると、その場で(または後日)指摘事項を提示されます。
例えば社会保険に加入すべき働き方の方が未加入、随時改定(月額変更)対象者について手続きが行われていない、一時金を支給したが賞与支払届が届け出されていない等です。
指摘事項は期限が設けられ、期限までに手続きの修正や未加入者については資格取得を行う必要があります。
そのため、指摘事項を受けたら、速やかに応じることになります。
調査期間は2年分(保険料の時効が2年の為)となりますので、中には2年前にさかのぼって資格取得届を提出してくださいということもあります。
その場合、2年分の社会保険料、その間の随時改定(月額変更)・定時決定(算定基礎)・賞与支払届の届け出も必要となります。
1人につき社会保険料が2年分で数百万円となる場合もあり、本人からの保険料徴収の問題、その間に使用した健康保険が取り消しとなりますので、健康保険が無効となる問題も生じ、資格取得漏れのその後の対応は深刻なものとなります。
仮に応じない場合には、雇用契約書・賃金台帳・出勤簿等の書類内容を基に、年金事務所の職権により資格取得が行われてしまします。
また、近年では一時金について、賞与支払届の届け出を指摘される場合が目立ちます。
例えば、年末年始(12月30日~1月3日までの間)に出勤した方については、年末年始手当として1日につき3,000円を支給する等です。
こちらの手当は通常の給与支給時に支給している場合が多いのですが、この場合でも年末年始手当=一時金=賞与支払届の対象となってしまいますので注意が必要です。
過去2年分にさかのぼっての一時金について賞与支払届を提出するように指摘を受けてしまいますので、保険料徴収の問題が生じます。
調査終了
全ての指摘事項が解消されると、調査が終了となります。
調査対象となる会社はランダムに指定され、年月をかけて全事業所を対象として行われます。
一度調査が行われますと、しばらくは対象にはなりませんが、いつまた調査対象となるかは不明ですので、普段から適正な手続きが必要となります。
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