労災保険の第三者行為災害とは?通常の手続きとは異なる点等、詳細に解説します!

今回は労災保険の第三者行為災害についてご説明させていただきます。

通常の労災の手続きとは異なり、別途提出が必要な書類等もございますので、ぜひお読みください。

目次

第三者行為災害とは

労災保険の給付の原因である事故(災害)が第三者の行為によって生じたもので、労災保険の受給権者である被災労働者又は遺族(被災者等)に対して、第三者が損害賠償の義務を有しているものをいいます。

第三者行為災害に該当する場合、被災者等は第三者に対し損害賠償請求権を取得すると同時に、労災保険に対しても給付の請求権を取得することとなりますが、同一の事由について両者から重複して損害のてん補を受けることとなれば、実際の損害額より多くの給付を受けることとなります。

また、被災労働者にてん補されるべき損失は、最終的には政府によってではなく、災害の原因となった加害行為等に基づき損害賠償責任を負った第三者が負担すべきものとなります。

このため、労災保険では第三者行為災害に関する労災保険の給付と、民事損害賠償との支給調整を定めており、先に労災保険が先行して給付をしたときは、政府は、被災者等が第三者に対して有する損害賠償請求権を、労災保険の給付の価額の限度で取得し(求償といいます)、被災者等が第三者から損害賠償を受けた時は、政府は、その価額の限度で労災保険の給付をしないこととされています(控除といいます)。

第三者とは

労災保険の保険関係の当事者(政府、事業主、労災保険の受給権者)以外の方のことをいいます。

損害賠償責任について

第三者が被災者等に対して、「損害賠償の義務があること」が第三者行為災害の要件となっていますが、民法などの規定により、第三者の側に民事的な損害賠償責任が発生した場合をいいます。

第三者行為災害となる例

・交通事故(自損事故を除く)

・他人から暴行を受けた場合

・他人が飼育、管理する動物により負傷した場合

提出書類

・第三者行為災害届(届その1~届その4)

※下記の添付書類が必要となります。

添付書類

添付書類交通事故による災害交通事故以外による災害備考
念書(兼同意書)※1 
「交通事故証明書」 または 「交通事故発生届」自動車安全運転センターで「交通事故証明書」がもらえない場合は「交通事故発生届」※2
示談書の謄本示談が行われた場合 (写しでも可)
自賠責保険等の損害賠償金等支払証明書または 保険金支払通知書仮渡金または賠償金を受けている場合(写しでも可)
死体検案書 または 死亡診断書死亡の場合(写しでも可)
戸籍謄本死亡の場合(写しでも可)

※1 念書(兼同意書)

被災者等が不用意な示談をすると、労災保険から給付が受けられなくなったり、既に労災から行われた給付を回収される場合があります。このようなことがないよう、念書で第三者行為災害による求償、控除、自賠責保険等に対する請求権を有する場合で自賠責保険等による保険金支払いを先に受けることを希望した場合の取り扱いに関すること、個人情報の取り扱いも記載されています。被災者等の自署が必要になります。

※2 交通事故証明書

自動車安全運転センターで取得ができます。警察署へ届け出ていないなどの理由で交通事故証明書が添付できない場合は、「交通事故発生届」を提出します。

提出先

管轄の労働基準監督署

民事損害賠償と労災保険との調整方法

「求償」と「控除」の二種類がありますが、労災保険の特別支給金(給付基礎日額の20%相当額の休業特別支給金など)については調整は行われず、労災保険から満額支給されます。

求償

政府が労災保険給付と引き換えに、被災者等が第三者に対して持っている損害賠償請求権を取得し、この権利を第三者に直接行使することをいいます。

このため、労災保険給付が第三者の損害賠償より先に行われると、第三者の行うべき損害賠償を政府が肩代わりした形になるため、政府が労災保険給付に相当する額を第三者(交通事故の場合は保険会社など)に請求することになります。

控除

同一の事由で第三者から損害賠償を受け、労災から保険給付が行われると、損害が二重にてん補されることになりますので、同一の事由により第三者の損害賠償(自動車事故の場合は自賠責保険などの支払い)が労災保険給付よりも先に行われていた場合、政府はその価額の限度で労災保険給付をしない(同一事由に相当する損害賠償額を差し引いて給付を行う)こととなります。

なお、支給調整される同一の事由のものとは、下記の通りです。

労災保険給付対応する損害賠償の損害項目
療養補償給付 複数事業労働者療養給付 療養給付治療費
休業補償給付 複数事業労働者休業給付 休業給付休業により喪失したため得ることができなくなった利益
傷病補償年金 複数事業労働者傷病年金 傷病年金同上
障害補償給付 複数事業労働者障害給付 障害給付身体障害により喪失または減少して得ることができなくなった利益
介護補償給付 複数事業労働者介護給付 介護給付介護費用
遺族補償給付 複数事業労働者遺族給付 遺族給付労働者の死亡により遺族が喪失して得ることができなくなった利益
葬祭料 複数事業労働者葬祭給付 葬祭給付葬祭費

※特別支給金は保険給付ではなく労働福祉事業として支給がされますので、支給調整の対象とはなりません。

示談を行う場合

被災者等と第三者との間で、被災者等が受け取るすべての損害賠償についての示談が真正(錯誤や強迫などではなく両当事者の真意によること)に成立し、被災者等が示談内容以外の損害賠償の請求権を放棄した場合、政府は原則として示談成立以後の労災保険給付を行わないことになります。

このため、示談を行う際は、示談内容が労災保険給付を含む全損害の填補を目的とするものであるのか、示談の効力発生日はいつなのか等確認をして頂き、示談を行う前には労働基準監督署にご連絡してください。

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