60歳以上の退職・再雇用時の社会保険同日得喪手続き、社会保険料の納付方法について解説します!
今回は、社会保険の同日得喪の手続き、保険料の納付方法についてご説明させていただきます。
同日得喪については、一般的な取得と喪失の手続きとは異なりますので注意が必要です。
ぜひお読みください。
60歳以上の退職・再雇用時の社会保険の取り扱い
旧来の日本の雇用制度では、60歳定年を採用している企業が多く、60歳になりますと定年により退職という形をとってきましたが、高年齢者雇用安定法の改正により、65歳までの雇用確保(65歳までの定年引上げ、定年制の廃止、65歳までの継続雇用制度の導入の3つの措置の内から選択)に加え、令和3年4月からは65歳から70歳までの就業機会確保が努力義務になっております。
この様な旧来の雇用制度からの背景により、60歳で雇用をいったん終了し、役職や職責を外し、再雇用を行うことで65歳まで継続雇用を行う企業が多く、60歳の雇用終了時と再雇用時を比べると給与を大幅に下げる傾向にあります。
このような措置により社会保険料が大きな負担となり、手取額の減少になります。
例えば、給与が末日締めの当月25日支給の会社で、3月31日に60歳定年を迎え、4月1日に再雇用を行う場合の例を見ていきましょう。
60歳までの給与は40万円でしたが、再雇用後は20万円になりました。
社会保険は雇用が継続している限り、加入のままとなります。
60歳定年時の標準報酬月額は41万円であり、再雇用後は給与が20万円ですので、標準報酬月額は20万円を予定しておりますが、標準報酬月額20万円にするためには随時改定が必要となります。
随時改定は給与改定月から3か月の給与の平均により、4か月目の標準報酬月額を改定する制度です。
この場合、7月の随時改定(4月・5月・6月支給給与を平均)となり、実際に給与から標準報酬月額20万円の保険料で控除され始めるのは8月支給給与(翌月徴収の場合)からとなります。
つまり、4月支給から7月支給までの4か月間は、随時改定前の標準報酬月額41万円の適用のままとなり、社会保険料だけで61,746円控除(令和6年1月・東京都・協会けんぽの場合)となり、他に控除される雇用保険料、所得税、住民税を加えますと、手取りが20万円の半分程になってしまい、毎月の給与で生活を成立させているサラリーマンにとっては死活問題となります。
そこで、60歳以上の方については社会保険の同日得喪手続きが認められております。
こちらの同日得喪手続きとは、60歳定年退職時にいったん社会保険資格を喪失し、再雇用時に新たに社会保険資格を取得することで、標準報酬月額を再雇用時の給与に応じた額に即時に変更できる手続きとなります。
こちらにより前述の例のような随時改定後の標準報酬月額を適用するまでの4か月間、手取りが極端に少なくなることを防ぐことができます。
なお、標準報酬月額20万円の場合の社会保険料は30,120円(令和6年1月・東京都・協会けんぽの場合)となり、標準報酬月額41万円の場合と比べ、半額以下に抑えられます。
60歳以上の同日得喪手続き
60歳以上の方の同日得喪手続きの要件や注意事項を見ていきましょう。
まず、要件は下記となります。
・60歳以上であること
・継続して再雇用されていること(1日も空くことなく再雇用されることです)
・再雇用後も社会保険加入要件を満たす労働条件であること
次に手続きの際の必要書類は下記となります。
・社会保険資格喪失届
・社会保険資格取得届
・就業規則の定年の部分の写し、または退職辞令等の写し
・再雇用契約書等の写し
・役員の場合は取締役会議事録の写し(報酬額、再任用の内容がわかるもの)
補足としては下記となります。
・前述ではわかりやすく定年を例に挙げて説明いたしましたが、定年制の定めの有無による相違はありません。60歳以後に退職した後、継続して再雇用された場合であれば対象となります。
・平成25年3月までは、60歳から64歳までの年金を受取る権利のある方が、この取扱いの対象でしたが、平成25年4月から、対象は年金を受取る権利のある方に限らず、「60歳以上の方」に拡大したという経緯がございます。
正社員の方に限定されるものではなく、厚生年金保険の被保険者に対する取扱いとなりますので、パートタイマーやアルバイト等で厚生年金保険の被保険者となっている方も対象となります。
・資格を喪失して取得を行いますので、被保険者番号も変わり、新しい健康保険証が発行され、健康保険証の番号が変わります。
同日得喪を行う場合の注意点は?
同日得喪は必ず行わなければならない手続きではなく、任意での手続きとなります。
標準報酬月額を下げるということは、保険料の負担軽減につながりますが、他に不利益として影響する事項がございます。
年金額と傷病手当金です。
将来受給できる老齢厚生年金額は標準報酬月額により決まりますので、標準報酬月額が少なくなるということは年金額がその分少なくなるということになります。
傷病手当金については支給開始前の12か月間の標準報酬月額を平均して算出した額を、給付額の基礎と使用しますので、標準報酬月額を下げた場合、傷病手当金給付額も下がることになります。
影響する金額としては少ないかと思いますが、金額の多寡にかかわらずご本人の不利益となる部分になりますので、対象者にはこちらの部分を説明して、ご理解を得た上で手続きを行うようにしましょう。
また、喪失および取得を行うことで、被保険者番号が新しくなります。
以後、定時決定や賞与支払届等の社会保険の手続きを行う際には新しい被保険者番号に変えて手続きを行いませんと、手続きが返戻になってしまいますのでご注意下さい。
社会保険料の納付方法
社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料)の徴収は日本年金機構が行うことになっており、会社は毎月の給料および賞与から被保険者負担分の保険料を差し引いて、会社負担分の保険料と合わせて、納付期限までに納めることになっています。
納付期限とは翌月末日となっており、4月分保険料は5月末日が納付期限となります。
保険料額の通知は毎月20日頃に、日本年金機構から会社へ保険料納入告知書または保険料納入告知額通知書(口座振替の場合)を送付して通知しております。
保険料の納付方法としては下記があります。
- 金融機関の窓口で納付
- 口座振替
- 電子納付
金融機関の窓口で納付の場合
保険料納入告知書を金融機関に提出して支払いを行います。
口座振替の場合
「健康保険厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書」に記入のうえ、口座振替を利用する金融機関および年金機構(金融機関経由)へ提出し、開始します。
電子納付の場合
電子納付の種類としてはインターネットバンキング、モバイルバンキング、ATM(Pay-easy)、テレフォンバンキングがあります。
インターネットバンキング等、利用にあたっては事前に金融機関と契約を結ぶ必要がありますので、あらかじめ金融機関にご相談下さい。
これらの電子納付を利用する場合は、保険料納入告知書に記載された「収納機関番号(00500)」、「納付番号(16桁)」、「確認番号(6桁)」の情報を使用します。
電子納付により保険料を納付した場合は、領収証書が発行されませんので、領収証書が必要な方は金融機関等の窓口で納付して下さい。
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