健康保険の標準報酬月額ってなに?報酬の範囲やテレワーク時の通勤手当の取り扱いなど詳細に説明します!
今回は健康保険の標準報酬月額については説明致します。
報酬の範囲、現物で支給されるものの取り扱い、テレワーク時の通勤手当について詳細に説明しております。
ぜひお読みください。
標準報酬月額とは
毎月の保険料や保険給付の計算をするときに用いるもので、被保険者が事業主から受ける報酬をいくつかの幅(等級)に区分した仮の報酬月額(標準報酬月額等級区分表)に当てはめて決められます。
健康保険の標準報酬月額は、第一級の58,000円から第50級の1,390,000円までの全50等級に区分され、厚生年金保険の標準報酬月額は、第1級の88,000円から第32級の650,000円の32等級に区分されています。
報酬の範囲
報酬とは、標準報酬月額の算定のもととなるもので、その名称を問わず、労働者が労働の対償として受けるものすべてをいいます。金銭(通貨)に限らず、現物で支給される食事や住宅、通勤定期券も報酬に含まれます。
臨時に受けるものは報酬の対象となりません。年3回以下で支給される賞与は標準賞与額の対象となります。
≪報酬に含まれるもの≫
【通貨で支給されるもの】
・基本給(月給、日給、時給等)
・諸手当(残業手当、通勤手当、住宅手当、家族手当、役付手当、休業手当、インセンティブ等)
・賞与・決算手当((※)年4回以上支給されるもの)
(※)賞与が年4回以上支給される場合、社会保険上は賞与ではなく、報酬とされますが、
どんな時でも報酬とされるわけではなく、賞与が年4回以上支払われることが、あらかじめ就業規則や賃金規定などで定められている必要があります。
例えば、就業規則では賞与の支給が年3回となっているが、今年だけ臨時で4回目の支給をした、といった場合、報酬とはならず、4回とも「賞与」として取扱いますので、賞与支払届の提出が必要です。
【現物で支給されるもの】
通勤定期券、回数券、食事、食券、社宅(独身寮)
≪報酬に含まれないもの≫
【通貨で支給されるもの】
・事業主が恩恵的に支給するもの(※)(病気見舞金、災害見舞金、結婚祝金等)
(※)恩恵的とは、例えば事業主が個人的に支給した場合などをいいます。その支給が賃金台帳に記載されるものであったり、業務成績等によるものであるときには恩恵的ではないと判断されることもあります。
・公的保険給付として受けるもの(傷病手当金、休業補償給付、年金等)
・臨時的一時的に受けるもの(大入袋、解雇予告手当、退職金等)
・実費弁償的なもの(出張旅費、交際費等)
・年3回まで支給される賞与など(年3回以下支給されるものは標準賞与額の対象となる)
【現物で支給されるもの】
・食事(本人からの徴収金額が現物給与の価格の2/3以上の場合)
・社宅(本人からの徴収金額が現物給与の価格以上の場合)
・制服・作業衣などの勤務服等
現物で支給されるものの取扱い
給与は金銭で支給されるのが一般的ですが、住宅の貸与、自社製品、通勤定期券などで支給するものを現物給与といいます。
報酬や賞与の全部または一部が、通貨以外のもので支払われる場合の価格は、厚生労働大臣が告示で定め、この価格に基づき通貨に換算し、金銭と合算して標準報酬月額が決められます。また、現物給与は勤務地の価格で計算します。
【食事が支給される場合】
・事業主が被保険者に社員食堂などで食事を支給した場合などは、都道府県ごとに厚生労働大臣が定める価格に換算して報酬に算入します。
・被保険者からその一部を徴収する場合は、現物給与の価格一覧表の価格から本人負担分を差し引いた額が報酬となります。ただし、被保険者が当該価格の2/3以上を負担する場合は、現物による食事の供与はないものとして取り扱います。
(例)社員食堂で昼食を20日分支給した場合(東京都の場合)
現物給与の価格 昼食270円×20日=5,400円
現物給与の価格の2/3 5,400円×2/3=3,600円
被保険者の負担額が3,600円未満→現物給与の価格から負担額を引いた額が報酬
被保険者の負担額が3,600円以上→現物給与とならず、報酬に算入されない
【住宅が提供される場合】
・事業主や被保険者に社宅や寮を提供している場合は、都道府県ごとに厚生労働大臣が定める価格で通貨に換算して報酬に算入します。
・算出には居住用の部屋を対象とし、玄関、台所、トイレ、浴室、廊下など居住用以外の部屋、営業用の部屋は含めません。畳を敷いていない居住用の部屋については、1.65平方メートルを1畳に換算します。
・被保険者からその一部を徴収する場合は、現物給与の価格一覧表の価格から本人負担分を差し引いた額を算入します。
(例)居住用の部分が10畳、本人負担分が月15,000円とした場合(東京都の場合)
現物給与の価格 2,830円(畳一畳につき)×10畳=28,300円
28,300円-15,000円=13,300円(現物給与)
【通勤定期券の場合】
通勤費を定期代や回数券で支給した場合は、現物給与として取り扱われますので、その全額を報酬として算入します。
3か月または6か月単位でまとめて支給する通勤定期券は1か月あたりの額を算出して報酬とします。
テレワークを導入した際の通勤手当や在宅勤務手当について
【テレワーク対象者が一時的に出社する場合】
基本的に、当該労働日における労働契約上の労務提供地が自宅か会社かによって、社会保険料の報酬とするか否かを判断します。
①当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅の場合
労働契約上、当該労働日の労務提供地が自宅とされており、業務命令により会社等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を会社が負担する場合、当該費用は原則として実費弁償と認 められ、社会保険料・労働保険料等の算定基礎となる報酬等・賃金には含まれません。
また、経費精算として支給できますが、経費精算をするためには出張旅費規程が必要です。
②当該労働日における労働契約上の労務の提供地が会社とされている場合
当該労働日は会社での勤務となっていることから、自宅から会社に出社するために要した費用を会社が負担する場合、当該費用は、原則として通勤手当として報酬等・賃金に含まれるため、社会保険料・労働保険料等の算定基礎に含まれます。
(参考)
当該日における労働契約上の労務の提供地 | 「自宅-会社」間の移動に要する費用の取扱い | 社会保険料・労働保険料等の算定基礎 |
自宅 | 業務として一時的に出社する場合は実費弁償(報酬等・賃金に該当しない) | 非対象 |
会社 | 通勤手当(報酬等・賃金に該当する) | 対象 |
※テレワークの導入に伴い、支給されていた通勤手当が支払われなくなる、支給方法が月額から日額単位に変更される等の固定的賃金に関する変動があった場合には、月額変更(随時改定)の対象となります。
【在宅勤務手当について】
会社がテレワーク対象者に対し「在宅勤務手当」を支払う場合、当該在宅勤務手当を社会保険上の報酬として取り扱うか否かについては、その支給要件や、支給実態などを踏まえて判断する必要があります。
①在宅勤務手当が労働の対償として支払われる性質のもの(実費弁償に当たらないもの)である場合
在宅勤務手当が、労働者が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を会社に返還する必要がないもの(例えば、会社が労働者に対して毎月5,000円を渡し切りで支給するもの)であれば、社会保険料・労働保険料等の算定基礎となる報酬等・賃金に含まれます。
②在宅勤務手当が実費弁償に当たるようなものである場合
在宅勤務手当が、テレワークを実施するに当たり、業務に使用するパソコンの購入や通信に要する費用を会社がテレワーク対象者に支払うようなものの場合、その手当が、業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、当該手当は実費弁償に当たるものとして、社会保険料・労働保険料等の算定基礎となる報酬等・賃金に含まれません。
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