労災保険の特別加入:海外派遣者の特別加入について詳細に解説します!

今回は労災保険の特別加入についてご説明させていただきます。

海外派遣者の特別加入について詳細にご説明致します。

ぜひお読みください。

目次

海外派遣者とは

以下に該当する場合をいいます。

  • 日本国内の事業主から、海外の支店、工場、現地法人、海外の提携先企業などへ労働者として派遣される人
  • 日本国内の事業主から、海外にある中小事業主等と認められる企業規模(※)の事業へ、事業主等(労働者ではない立場)として派遣される人
  • 独立行政法人国際協力機構など、開発途上地域に対する技術協力の実施の事業を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する人

※中小事業主等と認められる企業規模 

業種労働者数
金融業50人以下
保険業
不動産業
小売業
卸売業100人以下
サービス業
上記以外の業種300人以下

事業の規模は、国ごとで判断します。

日本国内の本社の労働者数と派遣先の企業の労働者数を合わせると上記の人数を超える場合でも、派遣先の企業の労働者数が上記の人数以内であれば、特別加入をすることができます。

なお、現地採用の方、留学目的の派遣については、特別加入をすることができません。

特別加入の手続き

派遣元の団体または事業主が、特別加入予定者の手続きをまとめて行います。海外派遣者の派遣の形態(転勤、移籍出向など)や派遣先での職種、派遣先事業場の形態、組織などは問いません。

すでに特別加入を承認されている派遣元の場合、派遣元の団体または事業主が、「特別加入に関する変更届(海外派遣者)」を、労働基準監督署を経由して労働局長に提出します。

  • 特別加入を承認されている人の氏名、業務内容などに変更があった場合
  • 派遣先の事業の名称や所在地が変わった場合
  • 派遣する国が変わった場合
  • 労働者として派遣されていた人が中小事業の代表者などに就任した場合
  • 中小事業の代表者などとして派遣されていた人が労働者となった場合
  • 新たに海外派遣者となった人を追加して特別加入させる場合
  • 帰国等により派遣先の事業に従事しなくなり、特別加入者の資格を失った人がいる場合

※希望日以後に提出した場合、希望日から加入ができませんので、海外派遣日の前に提出する必要があります。

海外派遣と海外出張の違い

海外出張であれば、国内の事業場の労災保険の対象となりますので手続きの必要はありませんが、海外派遣の場合は、特別加入の手続きを行っていなければ、労災保険から保険給付を受けることができません。

海外出張者と海外派遣者のどちらに該当するかは、勤務の実態でみて総合的に判断されることになります。

海外出張者とは

労働の提供の場が海外にあるのみで、国内の事業場に所属し、国内の事業場の使用者の指揮命令に従って勤務する労働者をいいます。

(例:商談、技術・仕様などの打ち合わせ、市場調査、視察、アフターサービス、現地での突発的なトラブル対処、技術習得などのために海外に赴く場合)

海外派遣者とは

海外の事業場に所属して、海外の事業場の使用者の指揮命令に従って勤務する労働者または海外の事業場の使用者をいいます。

(例:海外関連会社への出向、海外支店などへの転勤、海外で行う工事に従事する場合)

給付基礎日額と保険料

~給付基礎日額~

特別加入の保険料や、休業(補償)等給付などの給付額を算定する基礎となる日額となります。

給付基礎日額は、特別加入者の希望に基づいて決定がされます。

給付基礎日額を変更したい場合は、事前(3月2日~3月31日)に「給付基礎日額変更申請書」を提出することで、翌年度から変更をすることができます。

また、労働保険の年度更新の際にも給付基礎日額を変更することができます。

~保険料~

年間の保険料は、給付基礎日額×365に、それぞれの事業に定められた保険料率を乗じたものになります。

年度の途中で特別加入者になった場合、特別加入者でなくなった場合については、その年度内の特別加入月数に応じた保険料となります。

補償の対象

~業務災害~

労働者として派遣される場合

国内の労働者の場合と同様に、業務中、通勤途中で災害を被った場合に給付が行われます。

中小事業の代表者として海外派遣される場合

就業中の災害で、以下に該当する場合に保険給付が行われます。

  1. 特別加入申請書の「業務の内容」欄に記載された所定労働時間内に、特別加入申請を行った事業のためにする行為および、これに直接附帯する行為を行う場合
  2. 労働者の時間外労働または休日労働に応じて就業する場合
  3. ①または②に前後して行われる業務を中小事業主等のみで行う場合
  4. ①~③の就業時間内における事業場施設の利用中もしくは、事業場施設内で行動中の場合
  5. 事業の運営のために直接必要な業務(事業主の立場で行われるものを除く)で出張する場合
  6. 通勤途上で以下の場合
    ・労働者の通勤用に事業主が提供する交通機関の利用中
    ・突発事故による予定外の緊急の出勤途上
  7. 事業の運営に直接必要な運動競技会等の行事に労働者を伴って出席する場合

派遣先事業場からの国外出張は、国内の事業場からの海外出張の場合と同様の考え方で、業務災害か判断されることになります。

また、他人の暴行による災害で、私怨による犯行など一定のものは、業務中であっても保険給付を受けられない場合があります。

~通勤災害~

一般の労働者の場合と同様の取り扱いとなります。

~赴任途上の災害について~

赴任途上の災害は、以下の全ての要件を満たした場合に業務災害と認められます。

  • 海外派遣を命じられた労働者が、転勤に伴う移転のため、転勤前の住居から赴任先事業場に赴く途中で発生した災害であること
  • 赴任先事業主の命令に基づいて行われる赴任で、社会通念上、合理的な経路および方法であること
  • 赴任のために直接必要でない行為、もしくは恣意的行為に起因して発生した災害でないこと
  • 赴任に対して赴任先事業主より旅費が支給される場合であること

保険給付の請求

派遣元の団体または事業主が行いますが、請求書に「派遣先の事業主の証明書」(中小事業の代表者は不要です)を添付する必要があります。

また、「在外公館の証明書」や「新聞記事」、外国語で書かれている場合は日本語訳も添付します。

地位の消滅

~特別加入者としての地位の消滅~

海外事業が廃止になる場合や、海外派遣期間の終了等により帰国する場合など、海外派遣者の全部または一部が特別加入者でなくなるときは、派遣元の団体または事業主が労働基準監督署に「特別加入に関する変更届・特別加入脱退申請書」を提出します。(※脱退または変更を希望する日の30日前~前日までの間に提出する必要があります。)

海外派遣者のうち、特定の人のみが、派遣期間の終了等で国内に帰国した場合、「特別加入に関する変更届」提出がなかったとしても、帰国した日に特別加入者としての地位は消滅することとなりますが、労働保険料の算定のため、速やかに提出が必要です。

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