厚生年金保険の二以上事業所勤務者、同月内の取得・喪失時の保険料は?育児休業給終了時の標準報酬月額変更について解説します!

今回は厚生年金保険の二以上事業所勤務者、同月内で資格の取得・喪失があった場合の保険料について、育児休業終了時の標準報酬月額の変更についてご紹介します。

ぜひお読みください。

目次

二以上事業所勤務者の保険料

同時に複数の適用事業所に使用されることとなった場合で、それぞれの適用事業所において社会保険の加入要件を満たす場合には、それぞれの適用事業所で社会保険の加入手続きを行います。

保険料についてはそれぞれの適用事業所からの給与額に応じ、保険料が按分され、それぞれの適用事業所で支払います。

該当要件:
それぞれの適用事業所で社会保険の加入要件を満たす場合

保険料:
それぞれの適用事業所にて給与額から徴収し、支払う

具体的に該当する方は、次の様な方となります。

  • 複数の適用事業所の取締役等の役員になっているとき(無報酬・非常勤役員等は除く)
  • A社で就労しながらB社でも就労するとき(ダブルワーク)

まず、それぞれの適用事業所で社会保険の加入要件を満たす必要があります。

労働契約の場合、一般的な従業員の労働時間の4分の3以上をそれぞれの適用事業所で満たす必要があり、現実的にA社で週30時間以上、B社で週30時間以上という長時間の例はほとんどありません。

一方で取締役等の役員は労働時間という概念が無く、原則報酬を受けていれば加入となりますので、主に対象となるのは複数の適用事業所の取締役等の役員となっておりました。

しかし、特定適用事業所(現在は101人以上の被保険者の適用事業所)に使用される方は短時間労働者(週20時間以上の労働時間等)であれば社会保険加入となりましたので、短時間労働者としてダブルワークをしている方も現実的に該当するようになります。

したがいまして、短時間労働者を雇用する場合、当社以外での就労先で社会保険の加入の有無を確認する必要がございます。

複数の適用事業所の取締役等の役員になっている場合でも、報酬が発生しない方や非常勤役員等はそもそも社会保険の加入要件はありませんので、このような場合には要件に該当しません。

例. 

Aさんの2社での取り扱い
A社・・・取締役・・・報酬有り
B社・・・取締役・・・報酬無し

この場合、社会保険加入要件はA社のみでありますので、二以上勤務者に該当しません。

Bさんの3社での取り扱い
A社・・・取締役・・・報酬有り
B社・・・取締役・・・報酬有り
C社・・・取締役・・・報酬無し

この場合、A社・B社で二以上勤務者に該当し、C社は対象外です。

二以上勤務者に該当しましたら、会社は資格取得届を提出し、二以上勤務者が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」(以下、二以上事業所勤務届)を年金機構へ提出します(会社がまとめて提出しても結構です)。

二以上事業所勤務届を提出の際にA社・B社の一方を選択事業所として定めます。

どちらを選択事業所とするかは給与の多寡等の要件等は無く、被保険者の任意となります。

選択事業所として定めた会社の健康保険証が新たに発行されます。

保険料については、それぞれの会社で受ける報酬月額(※)を合算した月額より標準報酬月額が決定され、こちらの標準報酬月額に応じた保険料額をそれぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分し決定します。

二以上事業所勤務届の処理が行われると、決定通知が発行され、それぞれの会社に送付されます。

この決定通知に保険料が記載されており、給与計算にて保険料を控除します。

※報酬月額とは標準報酬月額の基礎となる、その月に支給される給与・報酬額となります。

報酬月額を標準報酬月額の表に当てはめますと、標準報酬月額となります。

例. 

厚生年金保険料
A社の報酬月額300,000円
B社の報酬月額200,000円
標準報酬月額500,000円(厚生年金保険料91,500円)の場合

A社の保険料=91,500円×300,000円÷500,000円=54,900円(事業主・被保険者合計額)
B社の保険料=91,500円×200,000円÷500,000円=36,600円(事業主・被保険者合計額)

同月内に取得・喪失を行った場合の保険料

保険料は資格取得日の属する月から発生し、資格喪失日の属する月の前月まで発生します。

では、同月内に資格取得・喪失が行われた場合はどのようになりますでしょうか。

厚生年金保険の資格を取得した月にその資格を喪失した場合は、資格取得した月の分として厚生年金保険料の納付が必要になります。

被保険者負担分の厚生年金保険料は退職時に給与から控除を行い、会社が会社負担分と被保険者負担分を翌月末までに納付することとなります。

ただし、厚生年金保険の資格を取得した月にその資格を喪失し、さらにその月に厚生年金保険の資格又は国民年金(第2号被保険者を除く)の資格を取得した場合は、新たに取得した先で保険料を支払い、先に取得した厚生年金保険料の納付は不要だったことになります。

この場合、年金事務所から対象の会社宛に厚生年金保険料の還付についてのお知らせを送付します。

会社は厚生年金保険料の還付を受けた後、被保険者負担分は会社から被保険者であった方へ還付することになります。

なぜこのような仕組みになっているのかといいますと、厚生年金保険料は将来の年金額に反映される保険料だからです。

年金は保険料を納めた額により金額が決まり、保険料の単位は1か月としております。

そして、月の末日での状態における保険料をその月の保険料としており、将来の年金に反映される仕組みとなっております。

健康保険料については厚生年金保険料のような還付制度はありません。

健康保険は被保険者である期間、健康保険を利用できるという恩恵を受けられますので、仮に同月内で資格取得を2回繰り返しても、健康保険料は2回分発生します。こちらは年金と医療保険の違いということになります。

育児休業給終了時の標準報酬月額変更

育児休業終了時から3か月の報酬を平均して、標準報酬月額に変動があれば、4か月目から標準報酬月額を変更することができます。

要件としては下記となります。

  • 現在の標準報酬月額と3か月を平均して算出した標準報酬月額との間に1等級以上の差が生じること。
    ※標準報酬月額は、育児休業終了日の翌日が属する月以後3カ月分の報酬の平均額に基づき算出します。ただし、支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)未満の月は除きます。
  • 育児休業終了日の翌日が属する月以後3カ月のうち、少なくとも1カ月における支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上であること。

3か月を平均して算出した標準報酬月額についてですが、育児休業終了日の翌日が属する月以後3か月となります。

こちらは育児休業終了日の翌日が属する月の支給日から3か月と読み替えていただくとわかりやすいです。

例.

給与が末日締め・翌月20日支給で月給者、9月15日に育児休業終了の場合

対象となる給与は、育児休業終了日の翌日が属する月の支給日から3か月ですので、9月20日支給、10月20日支給、11月20日支給となります。

9月20日支給は支給が無いので対象外、10月20日支給の支払基礎日数は15日(復帰9月16日から9月30日まで)なので対象外、11月20日支給は欠勤が無かったので31日あります。

この11月20日支給1カ月分で標準報酬月額を算出し、現在の標準報酬月額と比較して1等級でも変化すれば、標準報酬月額を12月から変更することができます。

なお、産前産後休業終了時の標準報酬月額変更もあり、要件は育児休業と同じです。

こちらは産前産後休業終了時に復帰する方が対象となります。

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