社会保険の加入について、パートタイム労働者と短時間労働者の違いを確認しましょう!
今回は、パートタイム労働者と短時間労働者の違い等についてご説明させていただきます。
2024年10月より社会保険の適用拡大が行われ、これまで加入対象にならなかった従業員についても、加入の手続きが発生する場合があります。
そのため、「パートタイム労働者」と「(特定適用事業所等に勤務する)短時間労働者」は一定の条件のもと、社会保険の適用対象となります。
この「パートタイム労働者」と「(特定適用事業所等に勤務する)短時間労働者」は、健康保険・厚生年金において、それぞれ要件が異なりますので、明確に区別する必要があります。
パートタイム労働者(短時間就労者)とは
パートタイマー労働者とは1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同一の事業所で働く通常の労働者と比較して4分の3以上である被保険者のことをいいます。
厚生年金保険・健康保険の適用事業所で働いている場合、この4分の3基準を満たせば社会保険へ加入する必要があります。
短時間労働者とは
上記のパートタイム労働者の基準(4分の3基準)を満たさない場合であっても、特定適用事業所(※1)・任意特定適用事業所(※2)に勤務し、次の全ての要件に該当した場合は、短時間労働者として被保険者になります。
≪短時間労働者としての5要件≫
- 特定適用事業所もしくは任意特定事業所に勤務していること
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用契約が2か月を超えて見込まれること
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 学生でないこと
(※1)特定適用事業所
厚生年金の被保険者が常時101人以上(令和6年10月からは51人以上)の事業所
(※)任意特定適用事業所
厚生年金の被保険者が常時100人以下(令和6年10月からは50人以下)の事業所
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大についてQ&A
- 就業規則や雇用契約書等で定められた所定労働時間又は所定労働日数が4分の3基準を満たさないものが、業務の都合等により恒常的に実際の労働時間及び労働日数が4分の3基準を満たした場合は、どのように取り扱うのか。
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実際の労働時間および労働日数が連続する2か月において、4分の3基準を満たした場合で、引き続き同様の状態が続いている、または続くことが見込まれるときは、4分の3基準を満たした月の3か月目の初日に被保険者の資格を取得する。ただし、短時間労働者として5要件をすべて満たした場合は、その時点から被保険者資格を取得する。
- 短時間労働者の厚生年金・健康保険の適用については、月額賃金が8.8万以上であるほかに、年収106万以上であるかないかも勘案するのか?
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月額賃金が8.8万以上であるかないかのみに基づき、要件を満たすか否かを判定する。(年収106万円以上は、参考の値になります)
- 健康保険の被扶養者として認定されるための要件の一つに、年収が130万円未満であることという収入要件があるが、この要件に変更があるか。
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健康保険の被扶養者の認定について、収入要件の変更はありません。なお、年収が130万未満であっても、パートタイム労働者4分の3基準または短時間労働者5要件を満たした場合は、厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。
- 同時に2カ所以上の事業所で勤務しているが、複数の事業所で被保険者資格の取得要件を満たした場合、どのような手続きが必要か。
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同時に2カ所以上の事業所で被保険者資格の取得要件を満たした場合、被保険者はそれぞれの事業所の取得手続きをした上で、いずれか1つの事業所を選択し、その事業所を管轄する年金事務所および健康保険組合に「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する必要がある。なお、被保険者資格の取得要件を満たすか否かについては、あくまでも各事業所単位で判断を行うこととしており、2カ所以上の事業所における月額賃金や労働条件等を合算して社会保険加入か否かの判断をするわけではない。
- 最初の雇用契約の期間が2か月以内である場合は、当該期間を超えて使用されることが見込まれることとして取り扱われることはないのか。
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最初の雇用契約の期間が2か月以内であっても、次の①又は②に該当する場合は、「2か月以内の雇用契約が更新されることが見込まれる場合」に該当するものとして、最初の雇用期間に基づき使用され始めた時に被保険者の資格を取得することになる。
- 就業規則や雇用契約書その他の書面において、その雇用契約が「更新される旨」又は「更新される場合がある旨」が明示されていること。
- 同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、契約更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績があること。
ただし、①又は②に該当する場合であっても、2か月以内で定められた最初の雇用契約の期間を超えて使用しないことについて労使双方が合意(口頭のみではなく、書面やメールによる合意)しているときは、「2か月以内の雇用契約が更新されることが見込まれる場合」に該当しないこととして取り扱います。
短時間正社員の被保険者資格について
「短時間正社員」とは、フルタイムの正規労働者と比べて、所定労働時間(所定労働日数)が短い正規型の労働者をいいます。
社内において、労働契約、就業規則及び給与規定等に、短時間正社員に係る規定があることが必要で、以下のいずれにも該当する場合に、被保険者となります。
- 期間の定めのない労働契約が締結されていること
- 時間当たり基本給および賞与・退職金等の算定方法が、同一事業所に雇用される同種のフルタイムの社員と同等であること。
派遣労働者の被保険者資格について
派遣労働者は、派遣された先の事業主の指揮命令の下で就労しますが、給与の支払いや就業規則は派遣元が責任を負うため、その雇用関係は派遣元事業主との間にあります。
そのため、派遣労働者に被保険者資格があれば、健康保険・厚生年金保険の加入手続きは、派遣元の事業主が行うことになります。
なお、登録型派遣労働者の場合、派遣期間が終了し、次の派遣期間までの間の社会保険は、原則として派遣労働者本人が国民健康保険や国民年金に加入することになりますが、派遣終了の段階で次の派遣先が決定しており、待機期間が1か月を超えずに次の雇用契約が確実に見込まれる場合は、被保険者期間が継続します。
ただし、待機期間中の健康保険・厚生年金保険料は発生します。
待機中の登録型派遣労働者が資格喪失となる例
- 派遣元に登録されている人が、派遣先A社雇用契約終了日において、派遣先B社との1か月以上の雇用契約が確実に見込まれていたが、その後、1か月以内に契約が締結されないことが確実となった。この場合、次の契約が締結されないことが確実となった日の翌日が資格喪失日になります。
- 派遣元に登録されている人が、派遣先A社雇用契約終了日において、派遣先B社との1か月以上の雇用契約が確実に見込まれていたが、待機期間が1か月を過ぎてしまった。この場合、1か月が経過した日が資格喪失日になります。
転勤の場合の被保険者資格について
- 本社で社会保険を一括管理している場合(※)→資格の得喪手続きは不要。
- 本社で社会保険を一括管理していない場合→転勤の場合、被保険者資格の「喪失届」「取得届」を提出する必要があります。なお、転勤したその日が資格喪失日となります。
例えば、4月1日付で転勤の場合は、4月1日がこれまでの事業所の資格喪失日であり、転勤先の資格取得日となります。
(※)複数事業所の本社一括適用と本社管理
本社、支社等ごとに適用されている適用事業所について、人事・給与等が本社で集中的に管理されており、事業主が同一である等の一定の基準を満たす場合、本社が支社等を含めた一つの適用事業所となる「一括適用」の申請を行うことができます。
また、本社採用と支社採用の方を別々に人事管理するなど一括適用事業所の承認を受けられない事業所でも、支社で勤務する本社採用の方の人事や給与等の管理を本社で行っている場合には、その方を「本社管理」として本社で手続きすることができます。
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