社会保険の適用拡大:51人以上の企業で働く短時間労働者の加入要件とは?

令和6年10月から厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業に社会保険の加入対象が拡大されています。

対象となる企業は特定適用事業所となり、今回は特定適用事業所で働く方の内、どのような方が加入要件に該当するのかを見ていきたいと思います。

目次

「2カ月を超える雇用の見込みがあること」とは?

まず、社会保険加入対象者として、短時間労働者と通常の労働者(1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上)の2つに分かれますが、共通の要件として「2カ月を超える雇用の見込みがあること」があります。

こちらの2カ月は雇用契約当初から超える見込みがあると、該当となります。

例えば、当初試用期間として2カ月の雇用契約で働き、2か月後に雇用継続を判断する場合は「見込みがある」に該当します。

また、同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、契約更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合にも「見込みがある」に該当します。

ただし、2月以内で定められた最初の雇用契約の期間を超えて使用しないことについて労使双方が合意しているときは社会保険に加入となりませんが、実際に雇用契約が2カ月を超えて継続する場合には加入となります。

短時間労働者とは

特定適用事業所(10月から51人以上の企業が該当)で働く方の内、短時間労働者で一定の要件を満たした方が社会保険に加入となります。

短時間労働者とは、1週間の所定労働時間または1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満である方となります。

そして、短時間労働者の内、下記の加入要件に該当する方が被保険者となります。

加入要件を確認しましょう!

特定適用事業所で働く短時間労働者の内、下記①から③を全て満たす方が加入対象となります。

  • 週所定労働時間が20時間以上であること
  • 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
  • 学生でないこと

➀から③について、詳しく見ていきましょう。

①週所定労働時間が20時間以上であること

まず、所定労働時間とは、その方が働くべき時間を指します。

雇用契約書等に記載があり、1日4時間勤務・週5日勤務と記載がございますと、週の所定労働時間は20時間ということになります。

残業がある場合

雇用契約書に週所定労働時間が18時間と定められており、残業等が発生し、週20時間以上となる場合にはどうなりますでしょうか。

2カ月間の残業時間を含んだ週労働時間が20時間以上となる場合で、引き続き同様の状態が続いているまたは見込まれる場合に、週20時間以上とみなして、週所定労働時間が20時間以上に該当します。

加入のタイミングとしては、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格を取得します。

なお、施行時(10月1日)において、既に実際の労働時間が直近2カ月において週20時間以上となっており、引き続き同様の状態が続くことが見込まれる場合は、施行時(10月1日)から被保険者の資格を取得します。

例. 雇用契約書の週所定労働時間が18時間
  • 残業により、2カ月間の週の労働時間が20時間以上となり、今後も見込まれる・・・3月目の初日に加入
  • 施行時(10月1日)に上記の状態である・・・10月1日に加入
  • 残業により、2カ月間の週の労働時間が20時間以上となるが、今後は残業の見込みが無い・・・加入しない

所定労働時間が定まっていない場合

パート・アルバイト等で所定労働時間が定まっておらず、いわゆるシフト制として、都度労働時間が決まるような働き方の方はどうなるのでしょうか。

毎月1か月分のシフトが決まり、それに基づいて働いている方は、1か月の所定労働時間を12分の52で除して算出します(1年間を52週とし、1か月を12分の52週とし、12分の52で除すことで1週間の所定労働時間を算出する)。

②所定内賃金が月額8.8万円以上であること

所定内賃金の月額とは、1か月間働いた時に支給される基本給および諸手当です。

但し、以下の賃金は算入されません。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
  • 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
  • 時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)

なお、こちらの所定内賃金の月額は、8.8万円以上かどうかを判断する時に用います。

実際に資格取得を行うときに使用する報酬月額(資格取得決定時の標準報酬月額の基となる額)は基本給・通勤手当・見込まれる残業代等の各種手当も含めて算出します。

③学生でないこと

こちらの学生は高等学校・短期大学・大学・高等専門学校・専修学校等に通う学生を指します。

※詳しくは厚生年金保険法施行規則第9条の6及び健康保険法施行規則第23条の6に列記されています

休学中、定時制課程、通信制過程の学生、卒業見込証明書を有する方で卒業前に就職し卒業後も引き続き同じ事業所に勤務する予定の学生は対象外となり、短時間労働者を判断する際には「学生ではない」という取り扱いになります。

例えば夜間の大学に通う学生については、「学生ではない」という取り扱いになりますので、週所定労働時間20時間以上で月額8.8万円以上でありますと、社会保険に加入となります。

学生除外要件は短時間労働者として被保険者になる場合のみです。

通常の社会保険の加入要件である労働時間・労働日数が4分の3以上を満たしますと加入ということになりますので注意が必要です。

※1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上となりますと、短時間労働者ではなくなります。

例. 大学生のアルバイト
  • 1日8時間、週3日勤務、週所定労働時間24時間・・・学生なので短時間労働者としての被保険者には該当せず、社会保険に加入できない。
  • 1日8時間、週4日勤務、週所定労働時間32時間・・・1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上を満たしているので、通常の従業員と同じように社会保険に加入する。

健康保険の被扶養者でも加入

短時間労働者の方が家族の健康保険の被扶養者となっている場合でも、要件を満たしますと社会保険加入となります。

例えば週所定労働時間が20時間、月8.8万円の給与の方ですと、適用拡大前は家族の健康保険被扶養者となっておりましたが、適用拡大後は社会保険に加入となります。

被扶養者のままか加入かを選択できるわけではございませんのでご注意ください。

社会保険加入の場合には、被扶養者として手続きをした家族のお勤めの会社で被扶養者削除の手続きが必要となり、健康保険証も使用できなくなります。

まとめ

短時間労働者としての被保険者

短時間労働者とは1週間の所定労働時間または1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満の方

2カ月を超える雇用の見込みがあり、下記①から③を全て満たしますと、短時間労働者として被保険者となります。

  • 週所定労働時間が20時間以上であること
  • 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
  • 学生でないこと

健康保険の被扶養者である場合には、被扶養者でなくなります。

通常の被保険者

2カ月を超える雇用の見込みがあり、1週間の所定労働時間または1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上の方は被保険者となります。

※学生であっても被保険者となります。

健康保険の被扶養者である場合には、被扶養者でなくなります。

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