日本が各国と結ぶ社会保障協定とは?保険料、加入期間の取り扱いなど詳細に説明します!

今回は社会保障協定についてご説明させていただきます。

日本が各国と社会保障協定を結ぶことによって起こる保険料の二重支払い防止、加入期間の通算などについて詳細に解説しています。

ぜお読みください。

目次

社会保障協定とは?

日本から海外に派遣された海外駐在員等については、日本の社会保障制度の保険料および海外駐在地での社会保障制度の保険料を二重に負担しなければならない場合が生じます。

また、日本や海外の年金を受け取るためには、一定の期間その国の年金制度に加入しなければならない場合があるため、その国で年金制度に加入した期間だけでは年金を受給できない場合があり、そのような場合には年金保険料は掛け捨てになってしまいます。

例として、AさんをB国に派遣させ、駐在員として就労させた場合を見ていきます。

Aさんは日本の会社と雇用契約があり、給与も日本の会社から支給されておりますので、厚生年金保険は加入したままとなり、保険料徴収も行われます。

一方で、住所はB国にありますので、B国での法律に従い年金制度に加入しなければなりません。

そうすると日本では厚生年金保険料を徴収され、B国では年金保険料を納めることになり、国は異なりますが二つの年金制度に年金保険料を納めることになります。

また、B国の老齢年金が支給されるに必要な年金加入期間が10年である場合で、AさんのB国への派遣が5年で終わったとしましょう。

B国では年金保険料を5年しか納めておりませんので、将来B国からの年金は受給できません。5年分の納付した年金保険料は掛け捨てとなってしまいます。

このような年金保険料の二重負担防止と年金加入期間の通算を目的として、日本は社会保障協定を各国と結んでおります。

2024年4月1日時点における、社会保障協定の発効状況として、日本は23カ国と協定を発効済です。

各国との社会保障協定の内容は、多くの点で共通しておりますが、協定を締結する相手国の制度内容等に応じて、それぞれ対象となる制度等が異なる箇所がありますので、実際に手続きを行う場合には各国との内容を確認しないとなりません。

二重加入の防止

社会保障協定を結んでいない国へ派遣する場合、前例の通り、日本と派遣先国のそれぞれで社会保障制度に加入し、年金保険料を納めることになります。

一方で社会保障協定を結んでいる国に派遣する場合、日本の社会保障制度加入は免除となり、派遣先国の社会保障制度に加入となります。

しかし、協定相手国へ5年を超えない見込みで派遣される場合には、所定の手続きを経て、引き続き日本の社会保障制度のみに加入し、協定相手国の社会保障制度の加入が免除されます。

原則・・・日本の社会保険加入は免除となり、派遣先国で年金に加入し年金保険料を納めます。

長期的に現地で生活する場合には、現地での年金受給期間を満たし、現地の年金を受給することができるため、長期的な場合は日本の社会保険加入は免除となります。

一時派遣(5年以内)・・・日本の社会保険加入は加入したままで、派遣先国での年金加入は免除となります。

短期的に派遣される場合、将来年金を受給してその国で暮らし続けることは想定されないため、派遣先国での年金加入は免除となります。

5年以内とありますが、国によっては5年に加えて3年や4年の延長が可能な場合もあり、各国で異なります。

年金加入期間の通算

年金加入期間通算とは、日本または協定相手国の年金制度の加入期間のみでは、年金の受給資格を満たさない場合に、日本または協定相手国の年金制度の加入期間を通算することにより、年金を受けられるようにするものです。

日本の老齢年金は、以前は25年加入し保険料を納めませんと受給できませんでしたが、現在では10年となっております。

通算をせずとも、10年を満すことは難しくはありませんが、一方の国のみで年金受給要件である10年を満たせない場合、それぞれの国の年金加入期間を通算し10年を満たせば年金を受給することができます。

例えば日本で8年加入した後、B国に渡り20年間年金を納めた場合、通算することにより日本の年金受給要件10年を満たすことができ、日本で年金を受給できるようになります。但し、年金額としては日本で納めた保険料分となります。

各国での異なるルール

社会保障協定は日本が各国とそれぞれ協定を結んでおります。

そのため各国ごとにルールが異なります。

例えばアメリカの場合、アメリカの社会保障制度の免除を受けるためには、アメリカに派遣される直前に、原則として6カ月以上継続して日本で就労、または居住し、日本の社会保険制度に加入していることが条件として追加されます。

また、アメリカの企業から日本に派遣される場合も、同様の条件が必要となります。

このようにアメリカとの協定には6か月ルールというものがございます。

また、フランスでは日本からフランスへの派遣が2回目以降の場合は、直近の一時派遣によるフランスでの就労期間が終了した時点から次の一時派遣による就労期間が開始する時点までの間に少なくとも1年が経過していることが必要です。

フランスから日本への派遣についても同様です。

このようにフランスとの協定には1年インターバルルールというものがございます。

ちなみに日本から中国へ再度派遣される場合、直前の派遣終了日から、再度の派遣の開始日までの間に経過するべき期間についてのインターバルルールは、中国との社会保障協定では定められていません。

ただし、直前の派遣と再度の派遣が実質的に連続したものではないことが必要となります。

社会保障協定の目的は年金保険料の二重負担防止と年金加入期間の通算ですが、各国によって異なります。

年金保険だけではなく医療保険(健康保険)等も対象であったり、二重加入しなくてもよいが年金加入期間の通算ができなかったりと異なります。

社会保障協定の対象となる社会保障制度は次の表のようになっております。

なお、対象となっていない制度については、それぞれの国の法令に基づき適用されます。

(日本年金機構HPより)

相手国協定発効年月年金期間二重加入防止の対象となる社会保障制度(※1)
通算日本相手国
ドイツ2000年2月公的年金制度公的年金制度
英国2001年2月公的年金制度公的年金制度
韓国2005年4月公的年金制度公的年金制度
アメリカ2005年10月公的年金制度公的年金制度(社会保障制度)
公的医療保険制度公的医療保険制度(メディケア)
ベルギー2007年1月公的年金制度公的年金制度
公的医療保険制度公的医療保険制度
 公的労災保険制度
 公的雇用保険制度
フランス2007年6月公的年金制度公的年金制度
公的医療保険制度公的医療保険制度
 公的労災保険制度
カナダ2008年3月公的年金制度公的年金制度
※ケベック州年金制度を除く
オーストラリア2009年1月公的年金制度退職年金保障制度
オランダ2009年3月公的年金制度公的年金制度
公的医療保険制度公的医療保険制度
 公的雇用保険制度
チェコ2009年6月(※2)公的年金制度公的年金制度
公的医療保険制度公的医療保険制度
 公的雇用保険制度
スペイン2010年12月公的年金制度公的年金制度
アイルランド2010年12月公的年金制度公的年金制度
ブラジル2012年3月公的年金制度公的年金制度
スイス2012年3月公的年金制度公的年金制度
公的医療保険制度公的医療保険制度
ハンガリー2014年1月公的年金制度公的年金制度
公的医療保険制度公的医療保険制度
 公的雇用保険制度
インド2016年10月公的年金制度公的年金制度
ルクセンブルク2017年8月公的年金制度公的年金制度
公的医療保険制度公的医療保険制度
 公的労災保険制度
 公的雇用保険制度
 公的介護保険
 公的家族給付
フィリピン2018年8月公的年金制度公的年金制度
スロバキア2019年7月公的年金制度公的年金制度
公的医療保険制度(現金給付)
公的労災保険制度
公的雇用保険制度
中国2019年9月公的年金制度公的年金制度(被用者基本老齢保険)
フィンランド2022年2月公的年金制度公的年金制度
公的雇用保険制度公的雇用保険制度
スウェーデン2022年6月公的年金制度公的年金制度
イタリア2024年4月公的年金制度公的年金制度
公的雇用保険制度公的雇用保険制度

(※1)「二重加入防止の対象となる社会保障制度」は、各社会保障協定の対象制度となっている年金制度、医療保険制度、労災保険制度、雇用保険制度の一般的な関係をまとめたものです。なお、具体的には各社会保障協定や各国の国内制度によります。

(※2)2018年8月1日に協定の一部を改正する議定書が発効しました。

オフィスステーションを使用し、手続きを効率化しましょう!

弊事務所では、クラウド型電子申請システム「オフィスステーション(https://www.officestation.jp/)」を使用し、手続業務の効率化を行っております。

電子申請を行い、手続き業務をクラウド化することによって業務の効率化を目指しましょう!

電子申請可能な手続きはもちろん、電子申請ができない手続きについてもクラウドシステムを使用するメリットが十分にあります。

ぜひご検討いただければと思います。

お問い合わせについて

以下のフォームからお問い合わせください。

目次