労災保険の特別加入:特定作業従事者の特別加入について詳細に解説します!

今回は労災保険の特別加入についてご説明させていただきます。

特定作業従事者の特別加入について詳細にご説明致します。

ぜひお読みください。

目次

特定作業従事者とは

以下に該当する場合をいいます。

~特定農作業従事者~

  • 「年間の農業生産物(畜産及び養蚕に係るものを含む)の総販売額が300万円以上」、または「経営耕地面積が2ヘクタール以上」の規模を有している。
  • 土地の工作、開墾、植物の栽培、採取、家畜(家きん及びみつばちを含む)、蚕の飼育の作業のいずれかを行う農業者(労働者以外の家族従事者などを含む)である。
  • 以下のいずれかの作業に従事する。
  • 動力により駆動する機械を使用する作業
  • 高さが2メートル以上の箇所での作業
  • サイロ、むろなどの酸素欠乏危険場所での作業
  • 農薬の散布作業
  • 牛、馬、豚に接触し、または接触するおそれのある作業

~指定農業機械作業従事者~

農業者(労働者以外の家族従事者などを含む)であって、次の機械を使用し、土地の耕作、開墾または植物の栽培、採取の作業を行う人をいいます。

  • 動力耕うん機その他の農業用トラクター
  • 動力溝掘機
  • 自走式田植機
  • 自走式スピードスプレーヤーその他の自走式防除用機械
  • 自走式動力刈取機、コンバインその他の自走式収穫用機械
  • トラックその他の自走式運搬用機械
  • 次の定置式機械または携帯式機械
    (動力揚水機、動力草刈機、動力カッター、動力摘採機、動力脱穀機、動力剪定機、動力剪枝機、チェーンソー、単軌条式運搬機、コンベヤー)
  • 無人航空機
    (農薬、肥料、種子もしくは融雪剤の散布または調査に用いるものに限る)

~国または地方公共団体が実施する訓練従事者~

国または地方公共団体が実施する訓練として行われる以下の作業に従事する方をいいます。

  • 職場適応訓練

求職者を作業環境に適応させるための訓練として行われる作業

  • 事業主団体等委託訓練

求職者の就職を容易にするために必要な技能を習得させるための職業訓練で、事業主または事業主の団体に委託されて行われる作業(教育訓練を行うための施設において主として実施される職業訓練を除く)

~家内労働者およびその補助者~

家内労働法における家内労働者および補助者であって、特に危険度が高いとされる以下の作業に従事する方をいいます。

  • プレス機械、型付け機、型打ち機、シャー、旋盤、ボール盤またはフライス盤を使用して行う金属、合成樹脂、皮、ゴム、布または紙の加工の作業
  • 金属製洋食器、刃物、バルブまたはコックの製造または加工に関する作業のうち、以下のいずれかに当たるもの。
    ・研削盤やバフ盤を使用して行う研削または研磨の作業
    ・溶融した鉛を用いて行う金属の焼入れ、焼きもどしの作業
  • 有機溶剤、有機溶剤含有物または特別有機溶剤等を使用して行う作業のうち、以下のいずれかの製品の製造または加工に関するもの
    ・履物、鞄、袋物、服装用ベルト、グラブ、ミット(科学物質製、皮製、布製に限る)
    ・木製または合成樹脂製の漆器
  • 陶磁器の製造に関する作業のうち、以下に該当するもの。
    ・粉じん作業
    ・鉛化合物を含有する釉薬を使って行う施釉の作業
    ・鉛化合物を含有する絵具を使って行う絵付けの作業
    ・施釉、絵付けを行ったものの焼成の作業
  • 動力により駆動する合糸機、撚糸機、または織機を使用して行う作業
  • 木工機械を使用して行う作業のうち、以下のいずれかの製品の製造または加工に関するもの
    ・仏壇、木製または竹製の食器

※家内労働者として特別加入するためには、原則として1年間に200日以上その作業に従事し、1日の就労時間が平均4時間以上見込まれることが必要です。

~労働組合等の一人専従役員(委員長等の代表者)~

常時労働者を使用しない労働組合等であって、労働組合等の事務所、事業場、集会場、道路、公園その他の公共の用に供する施設における集会の運営、団体交渉その他の当該労働組合等の活動に関する作業(作業に必要な異動を含む)に従事する一人専従役員をいいます。

~介護作業従事者および家事支援従事者~

<介護作業従事者とは>

介護関係業務に関する作業で、入浴、排せつ、食事などの介護その他の日常生活上の世話、機能訓練または看護に関する作業を行う人をいいます。

<家事支援従事者とは>

家事(炊事、洗濯、掃除、買物、児童の日常生活上の世話及び必要な保護その他家庭において日常生活を営むのに必要な行為)を代行し、又は補助する作業を行う人をいいます。

~芸能関係作業従事者~

俳優、舞踏家、音楽家、演芸家、スタント等の芸能実演家、もしくは、監督、大道具制作、アシスタント等の芸能製作作業従事者をいいます。

~アニメーション制作作業従事者~

キャラクターデザイナー、原画、背景、演出家、脚本家など、アニメーション制作の作業に従事する人をいいます。

~ITフリーランス~

ITコンサルタント、システムエンジニア、Webデザイナーなど、情報処理システム(ネットワークシステム、データベースシステム及びエンベデッドシステムを含む)の設計、開発(プロジェクト管理を含む)、管理、監査、セキュリティ管理もしくは情報処理システムに係る業務の一体的な企画又はソフトウェアもしくはウェブページの設計、開発(プロジェクト管理を含む)、管理、監査、セキュリティ管理、デザインもしくはソフトウェアもしくはウェブページに係る業務の一体的な企画その他の情報処理に係る作業に従事する人をいいます。

特別加入の手続き

特定作業従事者の特別加入については、特定作業従事者の団体(特別加入団体)を事業主、特定作業従事者を労働者とみなして労災保険の適用を行います。

特別加入の手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行うことになっています。

<特別加入団体の要件>

  • 特定作業従事者の相当数を構成員とする単一団体であること。
  • その団体が法人であるかどうかは問いませんが、構成員の範囲、構成員である地位の得喪の手続きなどが明確であること。その他団体の組織、運営方法などが整備されていること。
  • その団体の定款などに規定された事業内容からみて労働保険事務の処理が可能であること。
  • その団体の事務体制、財務内容などからみて労働保険事務を確実に処理する能力があると認められること。
  • その団体の地区が、団体の主たる事業所の所在地を中心として、定める区域に相当する区域を超えないものであること。
  • 新たに特別加入団体をつくって申請する場合

    提出するもの:特別加入申請書(一人親方等)
    提出先:所轄の労働基準監督署長を経由して所轄の都道府県労働局長に提出

  • すでに特別加入を承認されている団体を通じて加入する場合
    特別加入団体として承認されている団体に申し込み、加入手続きはその団体が行います。

    団体が提出するもの:特別加入に関する変更届(中小事業主及び一人親方等)
    提出先:所轄の労働基準監督署長を経由して所轄の都道府県労働局長に提出

~特別加入の承認を受けている場合~

 以下に該当する場合に、変更届の提出が必要となります。

  • 特別加入を承認されている人の氏名、業務内容などに変更があった場合
  • 新たに一人親方等として特別加入を希望する人がいる場合
  • すでに特別加入を承認されている人の一部が特別加入者としての要件にあてはまらなくなった場合

加入時健康診断

~対象者~

以下の業務に定められた期間従事したことがある場合は、特別加入の申請を行う際に、健康診断を受ける必要があります。

特別加入予定者の 業務の種類特別加入前に左記の業務に従事した期間(通算期間)必要な健康診断
粉じん作業を行う業務3年以上じん肺健康診断
振動工具使用の業務1年以上振動障害健康診断
鉛業務6カ月以上鉛中毒健康診断
有機溶剤業務6カ月以上有機溶剤中毒健康診断

手続きの方法

  • 特別加入団体を経由して、労働基準監督署に「特別加入時健康診断申出書」を提出します。
  • 申出書の業務歴から加入時健康診断が必要と認められる場合に、労働基準監督署から「特別加入健康診断指示書」および「特別加入時健康診断実施依頼書」が交付されます。
  • 「特別加入健康診断指示書」に記載された期間内に、健康診断実施機関の中から選んで加入時健康診断を受診します。
  • 健康診断実施機関が作成した「健康診断証明書(特別加入用)」を申請書または変更届に添付し、労働基準監督署に提出します。

特別加入が制限される場合

  • 特別加入予定者がすでに疾病にかかっており、就労が難しく療養に専念しなければならないと認められる場合
  • 特別加入予定者がすでに疾病にかかっており、その症状または障害の程度が、特定の作業からの転換を必要とすると認められる場合、特定作業以外の業務についてのみ、特別加入が認められることとなります。
  • 家内労働者は、特別加入予定者がすでに疾病にかかっていて、他の作業に転換した結果、特別加入者としての要件を満たさなくなる場合には、特別加入は認められません。

保険給付を受けられない場合

特別加入前に発症した疾病や特別加入前の事由で発症した疾病については、保険給付の対象外となります。

給付基礎日額と保険料

~給付基礎日額~

特別加入の保険料や、休業(補償)等給付などの給付額を算定する基礎となる日額となります。給付基礎日額は、特別加入者の希望に基づいて決定がされます。

給付基礎日額を変更したい場合は、事前(3月2日~3月31日)に「給付基礎日額変更申請書」を提出することで、翌年度から変更をすることができます。

また、労働保険の年度更新の際にも給付基礎日額を変更することができます。

~保険料~

年間の保険料は、給付基礎日額×365に、それぞれの事業に定められた保険料率を乗じたものになります。年度の途中で特別加入者になった場合、特別加入者でなくなった場合については、その年度内の特別加入月数に応じた保険料となります。

補償の対象

~業務災害~

一定の業務を行っていた場合に限って保険給付が行われます。

  • 特定農作業従事者

農業者が農作業場で行う、土地の耕作や開墾、植物の栽培や採取、家畜や蚕の飼育の作業のうち、特定の作業を行っている場合、もしくは、特定の作業に直接附帯する行為を行っている場合(例:農作業場で牛、馬、豚に接触、または接触するおそれのある作業など)

  • 指定農業機械作業従事者

農業者が農作業場で指定農業機械を使用して行う作業、指定農作業機械を農作業場と格納場所との間で運転または運搬する作業、もしくはこれに直接附帯する行為を行っている場合

  • 国または地方公共団体が実施する訓練従事者

訓練現場に就労している労働者に準じます。

  • 家内労働者等

家内労働者等が作業場で、特別加入申請書の「業務又は作業の内容」に記載した作業、作業場に隣接した場所で家内労働に関わる材料や加工品などの積み込み、積み卸し作業、運搬作業を行う場合

  • 労働組合等の一人専従役員

労働組合等の常勤役員が、労働組合等の事務所、事業場などで集会の運営、団体交渉その他の労働組合等の活動に関する作業を行う場合

  • 介護作業従事者および家事支援従事者

介護作業従事者が、入浴、排せつ、食事などの介護その他の日常生活の世話、機能訓練、看護に関する作業を行う場合、もしくは、家事支援作業従事者が、炊事、洗濯、掃除、等の日常生活を営むのに必要な行為を行う場合

  • 芸能関係作業従事者

放送番組、映画、劇場等における音楽、演芸、演出、企画等の作業を行う場合、もしくはこれに必要な移動行為を行う場合

  • アニメーション制作作業従事者

アニメーション制作の作業を行う場合、もしくはこれに必要な移動行為を行う場合

  • ITフリーランス

情報処理システムの設計、開発、管理、ソフトウェアもしくはウェブページの設計、開発、管理等の作業、もしくはこれに必要な移動行為を行う場合

~通勤災害~

一般の労働者の場合と同様の取り扱いとなりますが、以下の特定作業従事者については、通勤災害の保護の対象となりません。

  • 特定農作業従事者
  • 指定農業機械作業従事者
  • 家内労働者等

地位の消滅

~特別加入団体の脱退による消滅~

特定作業従事者の団体は、その団体の構成員全員を包括して脱退申請を行います。この場合、団体は、労働基準監督署に「特別加入脱退申請書(中小事業主等及び一人親方等)」を提出し、労働局長の承認を受けます。

~自動的な消滅~

  • 特定作業従事者が特別加入者としての要件を満たさなくなったときに、その日に特別加入者としての地位が消滅します。
  • 特定作業従事者が特別加入団体の構成員でなくなったときに、その日に特別加入者としての地位が消滅します。
  • 特定作業従事者の団体が解散したときに、その解散の日の翌日に特別加入者としての地位が消滅します。

~特別加入団体の承認取消による消滅~

特定作業従事者の団体が、関係法令の規定に違反した場合に、特別加入の承認が取り消される場合があります。

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