労災保険の特別加入:一人親方その他の自営業者の特別加入について詳細に解説します!
今回は労災保険の特別加入についてご説明させていただきます。
一人親方その他の自営業者の特別加入について詳細にご説明致します。
ぜひお読みください。
一人親方その他の自営業者とは
労働者を使用しないで、常態として以下の事業を行っている一人親方その他の自営業者およびその事業に従事する人(一人親方等)が該当します。
- 自動車を使用して行う旅客若しくは貨物の運送の事業又は原動機付自転車若しくは自転車を使用して行う貨物の運送の事業(個人タクシー業者や個人貨物運送業者など)
- 土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊もしくは、解体またはその準備の事業(大工、左官、とび職人など)
- 漁船による水産動植物の採捕の事業(⑦に該当する場合を除く)
- 林業の事業
- 医薬品の配置販売(医薬品医療機器等法第30条の許可を受けて行う医薬品の配置販売業)の事業
- 再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体などの事業
- 船員法第1条に規定する船員が行う事業
- 柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う事業
- 改正高年齢者雇用安定法第10条の2第2項に規定する創業支援等措置に基づき、同項第1号に規定する委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が新たに開始する事業又は同項第2号に規定する社会貢献事業に係る委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が行う事業
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律に基づくあん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師が行う事業
- 歯科技工士法第2条に規定する歯科技工士が行う事業
※労働者を使用している場合でも、労働者を使用する日の合計が年間で100日に満たないときには、一人親方として特別加入をすることができます。
特別加入の手続き
一人親方等の特別加入については、一人親方等の団体(特別加入団体)を事業主、一人親方等を労働者とみなして労災保険の適用を行います。
特別加入の手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行うことになっています。
<特別加入団体の要件>
- 一人親方等の相当数を構成員とする単一団体であること。
- 団体は法人であるかどうかは問いませんが、構成員の範囲、構成員である地位の得喪の手続きなどが明確であること。その他団体の組織、運営方法などが整備されていること。
- その団体の定款などに規定された事業内容からみて労働保険事務の処理が可能であること。
- その団体の事務体制、財務内容などからみて労働保険事務を確実に処理する能力があると認められること。
- その団体の地区が、団体の主たる事業所の所在地を中心として、定める区域に相当する区域を超えないものであること。
- 新たに特別加入団体をつくって申請する場合
提出するもの:特別加入申請書(一人親方等)
提出先:所轄の労働基準監督署長を経由して所轄の都道府県労働局長に提出
- すでに特別加入を承認されている団体を通じて加入する場合
特別加入団体として承認されている団体に申し込み、加入手続きはその団体が行います。
団体が提出するもの:特別加入に関する変更届(中小事業主及び一人親方等)
提出先:所轄の労働基準監督署長を経由して所轄の都道府県労働局長に提出
~特別加入の承認を受けている場合~
以下に該当する場合に、変更届の提出が必要となります。
- 特別加入を承認されている人の氏名、業務内容などに変更があった場合
- 新たに一人親方等として特別加入を希望する人がいる場合
- すでに特別加入を承認されている人の一部が特別加入者としての要件にあてはまらなくなった場合
加入時健康診断
~対象者~
以下の業務に定められた期間従事したことがある場合は、特別加入の申請を行う際に、健康診断を受ける必要があります。
特別加入予定者の業務の種類 | 特別加入前に左記の業務に従事した期間(通算期間) | 必要な健康診断 |
粉じん作業を行う業務 | 3年以上 | じん肺健康診断 |
振動工具使用の業務 | 1年以上 | 振動障害健康診断 |
鉛業務 | 6カ月以上 | 鉛中毒健康診断 |
有機溶剤業務 | 6カ月以上 | 有機溶剤中毒健康診断 |
~手続きの方法~
- 特別加入団体を経由して、労働基準監督署に「特別加入時健康診断申出書」を提出します。
- 申出書の業務歴から加入時健康診断が必要と認められる場合に、労働基準監督署から「特別加入健康診断指示書」および「特別加入時健康診断実施依頼書」が交付されます。
- 「特別加入健康診断指示書」に記載された期間内に、健康診断実施機関の中から選んで加入時健康診断を受診します。
- 健康診断実施機関が作成した「健康診断証明書(特別加入用)」を申請書または変更届に添付し、労働基準監督署に提出します。
~特別加入が制限される場合~
- 特別加入予定者がすでに疾病にかかっており、就労が難しく療養に専念しなければならないと認められる場合。
- 特別加入予定者がすでに疾病にかかっており、その症状または障害の程度が、特定の業務からの転換を必要とすると認められる場合、特定業務以外の業務についてのみ、特別加入が認められることとなります。
~保険給付を受けられない場合~
特別加入前に発症した疾病や特別加入前の事由で発症した疾病については、保険給付の対象外となります。
給付基礎日額と保険料
~給付基礎日額~
特別加入の保険料や、休業(補償)等給付などの給付額を算定する基礎となる日額となります。
給付基礎日額は、特別加入者の希望に基づいて決定がされます。
給付基礎日額を変更したい場合は、事前(3月2日~3月31日)に「給付基礎日額変更申請書」を提出することで、翌年度から変更をすることができます。また、労働保険の年度更新の際にも給付基礎日額を変更することができます。
~保険料~
年間の保険料は、給付基礎日額×365に、それぞれの事業に定められた保険料率を乗じたものになります。
年度の途中で特別加入者になった場合、特別加入者でなくなった場合については、その年度内の特別加入月数に応じた保険料となります。
補償の対象
~業務災害~
- 個人タクシー業者、個人貨物運送業者
- 免許などを受けた事業の範囲内において事業用自動車を運転する作業(運転補助作業を含む)、貨物の積み卸し作業およびこれらに直接附帯する行為を行う場合
- 原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物の運送の事業の範囲内において、原動機付自転車又は自転車を運転する作業、貨物の積卸作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合など
- 建設業の一人親方等
- 請負契約に直接必要な行為を行う場合
- 請負工事現場における作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合など
- 漁船による自営漁業者
- 水産動植物の採捕、これに直接必要な用船中の作業およびこれらに直接附帯する行為を行う場合
- 最終の発地から漁船まで、または漁船から最初の着地までの間において行為を行う場合など
- 林業の一人親方等
- 森林の中の作業地、木材の搬出のための作業路およびこれに前後する土場における作業並びにこれに直接附帯する行為を行う場合
- 作業のための準備、後始末、機械等の保管、作業の打ち合わせなどを通常行っている場所(自宅を除く場所で、以下「集合解散場所」という)における作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合など
- 医薬品の配置販売業者
住居を出た後の最初の用務先からその日の最後の用務先までの間に行う医薬品の配置販売業務(医薬品の仕入れを含む)およびこれに直接附帯する行為並びに医薬品の配置販売業務(医薬品の仕入れを含む)を行うために出張する場合(住居以外の施設における宿泊を伴う場合に限る)
- 再生資源取扱業者
- 再生資源を収集、運搬、選別、解体するなどの作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合
- 再生資源を収集、運搬するために行われるトラックなどの貨物運搬用車両などを運転または操作する作業およびこれらに直接附帯する行為を行う場合など
- 船員法第1条に規定する船員
- 船員法の適用のある船舶に乗り組んでいる場合(恣意的行為など積極的な私的行為を除く)
- 下船後における旅客の乗降のための作業および、荷下ろしなどの作業または出荷のための作業など事業のためにする行為に直接附帯する作業についても、事業の性質に応じて業務遂行性が認められることがあります。
- 柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師
- 柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う施術およびこれに直接附帯する行為
- 作業のための準備、後始末、機械等の保管、事務作業等を通常行っている場所における作業およびこれに直接附帯する行為など
- 創業支援等措置に基づく高年齢者
- 改正高年齢者雇用安定法第10条の2第2項に規定する創業支援等措置に基づく事業の遂行に係る作業およびこれに直接附帯する行為
- 作業のための準備、後始末、事務作業等を通常行っている場所における作業およびこれに直接附帯する行為など
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が行う施術およびこれに直接附帯する行為
- 作業のための準備、後始末、機械等の保管、事務作業等を通常行っている場所における作業およびこれに直接附帯する行為など
- 歯科技工士法第2条に規定する歯科技工士
- 歯科技工士法第2条に規定する歯科技工士が行う歯科技工およびこれに直接附帯する行為
- 作業のための準備、後始末、機械等の保管、事務作業等を通常行っている場所における作業およびこれに直接附帯する行為など
~通勤災害~
一般の労働者の場合と同様の取り扱いとなりますが、以下の一人親方等については、通勤災害の保護の対象となりません。
- 個人タクシー業者、個人貨物運送業者
- 漁船による自営漁業者
保険給付の内容
基本的には一般の労働者の保険給付と同様ですが、賞与を基に算定される傷病特別年金、障害特別年金、障害特別一時金、遺族特別年金、遺族特別一時金は支給されません。
地位の消滅
~特別加入団体の脱退による消滅~
一人親方等の団体は、その団体の構成員全員を包括して脱退申請を行います。
この場合、団体は、労働基準監督署に「特別加入脱退申請書(中小事業主等及び一人親方等)」を提出し、労働局長の承認を受けます。
~自動的な消滅~
- 一人親方等が、特別加入者としての要件を満たさなくなったときに、その日に特別加入者としての地位が消滅します。
- 一人親方等が特別加入団体の構成員でなくなったときに、その日に特別加入者としての地位が消滅します。
- 一人親方等の団体が解散したときに、その解散の日の翌日に特別加入者としての地位が消滅します。
~特別加入団体の承認取消による消滅~
一人親方等の団体が、関係法令の規定に違反した場合に、特別加入の承認が取り消される場合があります。
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