労災保険とは?だれが対象でどんな給付があるのか、簡単に説明します!
今回は労災保険についてお話しさせていただきます。
どんな会社が適用されるのか?
実際に従業員がケガをした際にどんな給付が行われるのか?
簡単に説明しておりますので、ぜひお読みください。
労災保険とは
労災保険の正式名称は、労働者災害補償保険といい、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、傷害、死亡等に対して必要な保険給付を行い、あわせて業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度です。
適用事業と適用労働者
適用事業
労働者を一人でも使用する事業は、労災保険の適用事業となります。
暫定任意適用事業
農林水産業で、常時使用する労働者が5人未満の個人経営の一部の事業は、労災保険の適用を受けるか任意に選択をすることができます。
労働者
職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われるものであり、アルバイト、パートタイマー、外国人労働者も含まれます。
出向者の扱い
安全配慮義務は出向先にありますが、出向先での危険を知りながら出向させている場合は、出向元も安全に配慮すべき義務があるとされますので、ケースバイケースで判断することとなります。
出向労働者に係る保険関係が、出向元事業と出向先事業とのいずれにあるかは、出向の目的及び出向元事業主と出向先事業主とが当該出向労働者の出向につき行った契約ならびに出向先事業における出向労働者の労働実態等に基づき、当該労働者の労働関係の所在を判断して決定すること。(昭和35.11.2 基発932号)
派遣労働者の扱い
派遣元の労災保険が適用されます。
特別加入
中小企業の事業主、一人親方、海外派遣者等で、労働者に準ずる業務を行っている方については、特別加入をすることで、労働者に準ずる業務を遂行している際の業務災害、通勤災害について、労災の保険給付をうけることができます。
適用除外
- 国の直営事業
- 非現業の官公署
保険料
労災保険にかかる保険料は、毎年1回労働者に対して支払った賃金総額に、事業の種類ごとに決められている保険料率を乗じることで計算するほか、業務上災害の発生頻度に応じて保険料を原則±40%の範囲で増減させる仕組みがあります。
労災保険料は全額事業主が負担します。
保険給付
労災保険による保険給付は、業務災害を原因とするものと通勤災害にわけることができます。
業務災害とは、業務が原因で労働者が負傷、疾病、障害、死亡した場合をいい、通勤災害とは労働者が通勤により負傷、疾病、障害、死亡した場合をいいます。
業務災害とは
「業務起因性」と「業務遂行性」が認められる場合に、業務災害と認定されます。
- 「業務起因性」・・・業務と因果関係が認められる災害であること。
- 「業務遂行性」・・・労働契約に基づいて業務を行っている際中に起きた災害であること。
このため、業務とは関係がなく、私的行為をしている際の災害は業務災害とは認められません。
(例)休憩時間中に同僚とキャッチボールをしていて球を受けそこなって負傷した。
通勤災害とは
就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質があるものは除かれます。
- 住居と就業場所との往復
- 就業場所から他の就業場所への移動
- ①の往復に先行し、または後続する住居間の移動
「就業に関し」とは
被災当日に就業することになっていた、あるいは就業していたことをいいます。
「住居」とは
労働者が就業のために拠点としているところをいいます。家族の住んでいる家とは別に、会社の近くにアパートを借りてそこから通勤をしている場合は、アパートが住居となります。
「就業の場所」とは
業務を開始し、または終了する場所をいいます。
外勤でいくつかの取引先を回って帰宅する場合、最初に行った取引先が業務を開始した場所となり、最後に行った取引先が業務を終了した場所となります。
「合理的な経路及び方法」とは
通常利用している経路の他に、一般的な経路として考えられる経路であれば、合理的な経路及び方法とされます。(例)交通事情でやむを得ず迂回したり、電車、バス、自家用車等、通常とは別の手段で通勤した場合
また、上記①~③の経路を逸脱、中断した際は、それ以降は通勤災害の適用とはなりませんが、逸脱、中断が、日常生活上必要な行為であって、厚生労働省で定めるものをやむを得ない事由により行うための、最小限度のものである場合には、逸脱、中断している間は除き、逸脱、中断前と、本来の経路に戻った後については、通勤とされます。
なお、通勤途中の経路上でジュースやたばこを購入したり、経路の近くにある公衆トイレに立ち寄る等は「ささいな行為」とされ、逸脱、中断とはなりません。
日常生活上必要な行為とは・・
- 日用品の購入その他これに準ずる行為
- 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発工場に資するものを受ける行為
- 選挙権の行使その他これに準ずる行為
- 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
- 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)
第三者行為災害
業務災害、又は通勤災害が第三者の行為によって生じたものの場合、第三者が被災労働者に対して損害賠償を行う義務を有しているものを、第三者行為災害といいます。
第三者行為災害に該当する場合、被災者等は第三者に対して損害賠償請求権と、労災への保険給付請求権を取得しますが、両方から損害のてん補を受けることになると実際の損害額より多く支払われてしまい、不合理となってしまいます。また、被災者等への損害のてん補は、政府ではなく、加害者である第三者が最終的に負担すべきものと考えられています。
このため、労災保険では、第三者行為災害に関する労災保険給付と、民事損害賠償との支給調整を、次のように定めています。
- 先に政府が労災保険給付をしたときは、政府は、被災者等が第三者に対して有する損害賠償請求権を労災保険給付の価額の限度で取得する(政府が取得した損害賠償請求権を行使することを「求償」といいます)。
- 被災者等が第三者から先に損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で労災保険給付をしないことができる(これを「控除」といいます)。
また、交通事故の場合、労災保険給付と自賠責保険等による保険金支払のどちらか一方を受けることができますが、どちらを先に受けるかは被災者等が決めることができます。
保険給付の内容
療養(補償)給付
労働者が、業務上または通勤が原因で負傷、疾病にかかり、療養を必要とする場合、「治ゆ」するまでの間、以下の給付が支給されます。健康保険とは異なり、自己負担はありません。
休業(補償)給付
労働者が、業務上の事由または通勤による負傷または疾病により、療養のため労働することができず賃金を受けていない場合、休業4日目から支給されます。
傷病(補償)年金
業務上の事由または通勤による負傷、疾病による療養開始後1年6ヵ月が経過した日、またはその日以後、次の要件に該当するときに支給されます。
- 傷病が治っていないこと。
- 傷病による障害の程度が傷病等級表の傷病等級に該当すること。
障害(補償)給付
業務上の事由、または通勤による負傷、疾病が治ったときに、身体に一定の障害が残った場合に、支給されます。
障害(補償)年金前払一時金
障害等級に応じて定められている一定額の中から選択し、1回に限り、障害(補償)年金の前払いを受けることができます。
障害(補償)年金前払一時金が支給されると、各月の障害(補償)年金は、各月に支給されるべき額の合計額が、前払い一時金の額に達するまでの間、支給停止されます。
障害(補償)年金差額一時金
障害(補償)年金の受給権者が死亡したとき、または、既に支給された障害(補償)年金と障害(補償)年金前払一時金の合計額が、障害等級に応じて定められている一定額に満たない場合には、遺族に対して、障害(補償)年金差額一時金が支給されます。
介護(補償)給付
障害(補償)年金または傷病(補償)年金の受給権者のうち、障害等級・傷病等級が第1級の方すべてと、第2級の「精神神経・胸腹部臓器の障害」を有している方が、現に介護を受けている場合に、支給されます。
遺族(補償)給付
労働者が、業務上の事由、または通勤により死亡したときに、遺族に対して支給されます。
給付には、遺族(補償)年金と、遺族(補償)一時金があります。
葬祭料/葬祭給付
労働者が、業務上の事由、または通勤により死亡したときに、葬祭を行う者に支給されます。
二次健康診断等給付
定期健康診断等の結果、業務上の事由による脳血管・心臓疾患に関連する一定の項目(血圧・血糖・血中脂質・肥満)のすべてにおいて、異常の所見があると認められるときに、支給されます。
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