出産手当金、出産育児一時金ってなに?出産・育児に関する社会保険制度を詳しく解説します!
今回は、出産・育児に関する社会保険制度について解説致します。
出産・育児で働くことができなくなった場合に受給できる給付金や、その他の手続きについても詳細に解説しています。
ぜひお読みください。
出産手当金について
従業員が出産する場合には、産前産後休業として出産予定日以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日から起算して56日までの範囲で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。
出産日当日は産前休業の期間に含まれ、出産が予定日より遅れた場合は、その期間についても出産手当金が支給されます。
支給要件
被保険者本人が出産したこと
- 出産手当金は、パートやアルバイトでも健康保険の被保険者であれば受給できますが、被扶養者は受給できません。
妊娠4カ月以上の出産であること
- 対象の出産は、妊娠4カ月(85日)以上経過した後の出産に限ります。
- 出産とは、流産・死産・人工妊娠中絶を含みます。
出産のために仕事を休み、給与の支給がないか支払額が出産手当金より少ないこと
- 出産手当金は、受給可能な状態であっても有給等の扱いにより、本来の報酬の全部が支払われている場合には支給されず、また報酬の一部(諸手当等)が支払われている場合には、出産手当金支給額から控除し調整することになります。
- 報酬の一部(諸手当等)が支払われている場合の支給額の算出方法については、月を単位として支給される諸手当等の報酬があるときは歴日数にかかわらず、その額を30で除して報酬の日額を求め、出産手当金支給日額(標準報酬日額の2/3)からこの報酬の日額を控除して得た額が支給されることになります。
支給対象期間
- 出産手当金は出産日(出産が予定日より後になった場合は、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内で、会社を休み、給与の支払いがなかった期間を対象として支給されます。
ここでいう出産予定日とは自然分娩の場合の予定日のことになり、帝王切開など計画分娩を行う予定の日ではないので、注意が必要です。
- 出産予定日より遅れて出産した場合、遅れた期間についても支給対象となります。
(出産予定日前42日+出産予定日から遅れた出産日までの日数+産後56日)
支給額
1日当たりの金額
≪支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額≫(※)÷30日×(2/3)
(支給開始日とは、一番最初に出産手当金が支給された日のことです)
(※)支給開始日の以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使用して計算します。
ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
イ 標準報酬月額の平均額
・28万円:支給開始日が平成31年3月31日までの方
・30万円:支給開始日が平成31年4月1日以降の方
・健康保険組合の場合、上記の出産手当金に独自の給付(付加給付)がある場合もあります。
退職後の継続給付について
次の2点を満たしている場合に退職後も引き続き、出産手当金の支給を受けることができます。
- 被保険者の資格を喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間(健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。
- 資格喪失時に出産手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。
なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の出産手当金は支給されません。
出産育児一時金について
健康保険で出産とは、妊娠4ヶ月(85日)以上を経過したあとの出産、死産、人工中絶をいいます。
出産をした場合、被保険者には「出産育児一時金」、被扶養者である家族には「家族出産育児一時金」が支給されます。
支給額(法定給付額)
本人(被保険者)が出産した時・・・出産育児一時金 500,000円
家族(被扶養者)が出産した時・・・家族出産育児一時金 500,000円
- 2023年3月末までの出産は420,000円。
- 産科医療補償制度に加入する医療機関等の医学的管理下における、妊娠22週以降の出産(死産を含む)の場合の金額です。制度未加入機関での出産の場合は488,000円(2023年3月末までの出産は408,000円)
- 多胎児を出産された場合には、出産された胎児数分だけ支給されますので、双生児の場合は、2人分が支給されます。
直接支払制度
出産育児一時金の支給申請および受取を、分娩機関が被保険者に代わって行う制度です。
制度の利用は、出産予定の分娩機関にて合意文書を取り交わすだけで済み、協会けんぽ及び健康保険組合への申請は不要です。
出産費用が50万未満で出産育児一時金の額より少ない場合は、申請すると、その差額が支給されます。
退職後の給付
以下の要件をすべて満たしているときに資格喪失後の給付として出産育児一時金を受けることができます。
- 妊娠4ヵ月(85日)以上の出産であること。
- 資格喪失日の前日(退職日)までに継続して1年以上被保険者期間(任意継続被保険者期間は除く)があること。
- 資格喪失後(退職日の翌日)から6ヵ月以内の出産であること。
※資格喪失後の給付は被保険者であった人の出産が対象となり、被扶養者であった家族の出産は対象外になります。
社会保険料の免除について
免除の手続き
事業主が、産前産後休業や育児休業を取得している被保険者について届出(産前産後休業取得者申出書・育児休業取得者申出書)をすることによって、社会保険料(健康保険料(介護保険料を含む)と厚生年金保険料)が免除されます。
この免除は、被保険者負担分だけでなく、事業主負担分も対象となります。
育児休業を延長する場合は、「育児休業取得者延長届」、予定よりも早く終了する場合には、「育児休業取得者終了届」を提出します。
免除期間
- 毎月の報酬にかかる保険料・・・育児休業等の開始日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月までの保険料が免除になります。また、開始日の属する月と終了日の属する月が同一の場合でも、育児休業等開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合には、その月が1か月分免除となります。
- 賞与にかかる保険料の免除・・・当該賞与月の末日を含んだ連続した1か月を超える育児休を取得した場合に免除の対象となります。
育児休業終了後の手続きについて
育児休業等終了時報酬月額変更届
育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等(育児休業及び育児休業に準ずる休業)終了日に3歳未満の子を養育している被保険者は、次の条件を満たす場合、随時改定に該当しなくても、育児休業終了日の翌日が属する月以後3カ月間に受けた報酬の平均額に基づき、4カ月目の標準報酬月額から改定することができます。
ア.これまでの標準報酬月額と改定後の標準報酬月額※との間に1等級以上の差が生じること。
※標準報酬月額は、育児休業終了日の翌日が属する月以後3カ月分の報酬の平均額に基づき算出します。ただし、支払基礎日数が17日未満の月は除きます。
例えば、給与の支払いが15日締、当月25日払いの会社の従業員が4月1日に復帰した場合、4月25日に支給される報酬は、4月1日~15日に対する賃金になりますので、支払基礎日数は15日になります。
届出書には4月~6月の支払基礎日数と報酬額を記載しますが、支払基礎日数17日未満の4月は除外し、5月、6月の2か月で平均を算出します。
イ.育児休業終了日の翌日が属する月以後3カ月のうち、少なくとも1カ月における支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上であること。
※短時間就労者(パート)に係る支払基礎日数の取扱いについては、3カ月のいずれも17日未満の場合は、そのうち15日以上17日未満の月の報酬月額の平均によって算定します。
育児休業等終了時に3歳未満の子を養育している被保険者からの申出を受けた事業主が「育児休業等終了時報酬月額変更届」を日本年金機構(健康保険組合)へ提出します。
決定された標準報酬月額は、1月~6月に改定された場合、再び随時改定等がない限り、当年の8月までの各月に適用されます。また、7月~12月に改定された場合は、翌年の8月までの各月に適用されます。
養育期間標準報酬月額特例申出書
①子どもが3歳に達するまでの養育期間中に標準報酬月額が低下した場合、養育期間中の報酬の低下が将来の年金額に影響しないようその子どもを養育する前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができる仕組みです。
②被保険者の申し出に基づき、より高い従前の標準報酬月額をその期間の標準報酬月額とみなして年金額を計算します。
届出には添付書類が必要です。
(1)戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書
(申出者と子の身分関係および子の生年月日を証明できるもの)
※申出者が世帯主の場合は、申出者と養育する子の身分関係が確認できる住民票の写しでも代用できます。
(2)住民票の写し
(養育特例の要件に該当した日に申出者と子が同居していることを確認できるもの)
(例)育児休業終了の場合は、育児休業終了年月日の翌日の属する月の初日以後に発行された住民票が必要です。※提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものを添付します。
申出者と養育する子の個人番号がどちらも申出書に記載されている場合は、(2)の添付書類は不要です。
③従前の標準報酬月額とは養育開始月の前月の標準報酬月額を指しますが、養育開始月の前月に厚生年金保険の被保険者でない場合には、その月前1年以内の直近の被保険者であった月の標準報酬月額が従前の報酬月額とみなされます。その月前1年以内に被保険者期間がない場合は、みなし措置は受けられません。
④対象となる期間は、3歳未満の子の養育開始月から養育する子の3歳誕生日のある月の前月までです。
⑤3歳未満の子を養育する被保険者または被保険者であった方で、養育期間中の各月の標準報酬月額が、養育開始月の前月の標準報酬月額を下回る場合、被保険者が「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を事業主を経由して提出します。なお、申出日よりも前の期間については、申出日の前月までの2年間についてみなし措置が認められます。
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